外資系ソフトベンダーなどで7年間、営業経験を積み、実績もそれなりに上げていたという宇田。セキュリティという初めての分野で新規開拓を任されることになっても、「何とか売れるだろう」と楽観的だったという。
だが現実は厳しかった。製品やサービスへの評価は上々なのに、なぜか売れない。2カ月が過ぎ、さすがに焦った宇田は、保険の営業をしている友人に話を聞いてみたりもした。だが特効薬があるわけもなく、「結局はリスクを挙げて脅すしかないのか」と途方に暮れた。
だがその4カ月後、転機は訪れた。ある顧客の社内ネットワークがウイルスでダウンしたのだ。知らせを受けた宇田はエンジニアと現場に急行、復旧にあたった。商売抜きの“救援活動”である。そしてこれが、後の大型受注の呼び水となった。事態が収束した後、宇田は顧客の担当者から「社内向けサービスの企画を考えてほしい」と依頼されたのだ。宇田らの提案は即、採用となり、翌年には社外向けサービスにも商談は広がった。
この経験で宇田は、「顧客に金を出させるだけでは、いわば借りを作っている状態。互いにハッピーになれる提案をしないと、セキュリティ商材は売れない」と痛感した。ハッピーになれる提案の種を得るため、普段からいろいろな立場の人に会って話を聞く。例えば、初対面の人と会ったら、帰り際に「こんな話を聞いてくれそうな方はいませんか」と頼んでみるのだとか。「意外と紹介してくれるものですよ」と、宇田は人懐っこい笑みを浮かべた。
宇田 茂樹(うだしげき)氏 |