TISの2006年3月期中間連結決算は減収減益で、特に利益の落ち込みが深刻だった。大型の不採算案件発生や買収した子会社の不振などで、曲がり角に立たされている。
 「9月9日には下方修正を発表し、大変ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」。11月8日に開かれた2006年3月期中間決算説明会の冒頭で、TISの岡本晋社長は頭を下げた。



 TISの2006年3月期中間の連結業績は、売上高が前年同期比1.7%減の982億1000万円、営業利益が同50.2%減の36億200万円、経常利益が同48.9%減の37億8000万円だった。2005年3月期中間には7.2%だった営業利益率は、2006年3月期中間には3.6%にまで落ち込んだ。通期の予想も、売上高こそ前年同期比2.5%増の2047億円だが、営業利益は同19.3%減の121億円、経常利益は同17.9%減の124億円となる見通しだ。

 TISは、これまで順調に増収増益基調を続けてきたが、ここにきて急ブレーキがかかっている。

 利益率が急落した大きな要因は、大型不採算プロジェクトが発生したことだ。製造業とサービス業の顧客向けのソフト開発で、不採算の金額は25億円にも上った。

バブル的な感覚あった

 製造業の顧客の不採算プロジェクトについては、要件定義のやり直しを終え、この顧客が案件を継続するかどうかの返事を待っている。また、サービス業の顧客の不採算プロジェクトは、11月末に開発工程が終了する予定だ。

 なぜこれだけの大型不採算プロジェクトが相次いで発生したのか。その原因について、岡本社長はプロジェクトマネジメントの失敗に加えて、「これまで10年近く増収増益だったことで、社内の一部にバブル的な感覚があったと思う」と悔しがる。

 不採算プロジェクトを発生させた部署は、得意分野の技術力や動員力など、許容できる能力を超えた案件にもかかわらず受けたという。「今年になってほとんどの部署の社員と話をしたが、不採算案件を出した部署以外は、きちんと管理できている」と岡本社長は話す。途中の工程まで他社が手掛けていたプロジェクトを引き継いで不採算が発生したケースもあり、「例えば要件定義はここまでやるとか、会社によってフレームワークが違うものだが、うまく引き継げなかった」と、岡本社長は説明する。

 こうした不採算プロジェクトを撲滅する対策の1つとして、今年6月から提案レビュー制度を新たに開始した。1億円以上の規模の開発プロジェクトはすべて、受注・提案の段階でチェックして不採算プロジェクト発生のリスク回避を図る。このほか、PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)による開発プロジェクトの経過の監視や、契約書を改訂して全社統一仕様にし、あいまいな条項をなくすなど、不採算プロジェクトを未然に防止するための新たな対策に次々と着手している。

 まずは不採算プロジェクトを未然に防止する仕組みを確立し足元を固めることが急務だ。