アプリケーションサーバー市場は2極化が進む。大規模基幹系システムをターゲットとするハイエンド市場と、中堅企業のレガシーマイグレーションを狙うエントリー市場に分かれつつある。メーカー別のシェアでは、日本IBMが2位以下に大きく差をつけて首位をキープしている。




図1●2005年(暦年)のアプリケーションサーバー製品のメーカー出荷金額
 2005年も、アプリケーションサーバー市場は堅調に拡大しそうだ。ミック経済研究所の推定によれば、2005年のメーカー出荷金額の合計は284億6500万円。2004年の274億4000万円から3.7%増える。伸びが大きいのは日立製作所だ(図1[拡大表示])。同社のERP(統合基幹業務システム)ソフトGEMPLANETの稼働環境にCosminexusを強く推奨したことが貢献したもようだ。

 シェアでは日本IBMのWebSphereが3年連続1位。それに富士通と日立、日本BEAシステムズが続く。2003年以降、上位3社はわずかずつではあるが毎年、シェアを高めている。逆にBEAと日本オラクルは少しずつシェアを落としている状況だ。日本IBMの山下晶夫ソフトウェア事業WebSphere事業部長は「大規模の商談が増えている。システムを全面的に再構築するのではなく、過去の資産をうまくつないで有効利用しましょう、という提案が好評だ」と話す。

 大企業はともかく中堅・中小企業ではまだまだアプリケーションサーバーの導入は始まったばかりで、市場拡大の余地は大きい。にもかかわらず、金額規模が3.7%しか伸びていない理由は、売れ筋製品の値下がりが急速に進んでいることと、中小企業への導入が遅々として進んでいないことにありそうだ。ミック経済研究所の藤巻信之調査第三部部長・主任研究員は「ここ数年は現状と同程度の成長にとどまるのではないか」とみる。

思い切った値下げが相次ぐ

 実際、売れ筋製品の値下げが相次いでいる。アプリケーションサーバーの売れ筋は120万~130万円程度の製品だが、それを日本IBMとNECは相次いで半額程度にまで値下げした。競合各社が商談での値引きを迫られる例も多く、中堅企業向けでのアプリケーションサーバー製品の値ごろ感は急速に下降している。

 これにはオープンソース製品のJBossの存在も無関係ではない。ある外資系ベンダーのアプリケーションサーバー責任者は「北米でJBossが好調なのを見ると、アプリケーションサーバー製品のライセンス販売というビジネスがいつまで成立するのかと不安を感じる」と話す。成立しなくなったときに備え、アプリケーションサーバー上で稼働する付加機能の開発に力を入れているというのだ。

 もちろん、JBossと正面からぶつかるというケースはそう多くない。しかしユーザーにとっては、商用ベンダー製品を提案するソリューションプロバイダから有利な価格を引き出す材料になることは確かだ。

適用分野は着実に広がる

 それでも、アプリケーションサーバーの適用分野は広がっている。日立の山田健雄販売推進本部Eビジネス統括は「全社ポータルや受発注システムなど、幅広いアプリケーションを動かすのに必須のミドルウエアになりつつある」と語る。NECのユビキタスソフトウェア事業部伊藤晃徳統括マネージャーも、「案件はすべての業種で発生している。7月に売れ筋の製品を大幅値下げしたが、その分は本数の伸びで補えた」と語る。

 中堅企業でも、レガシーマイグレーション案件などでアプリケーションサーバーを導入する例は増えている。小規模の案件が増え始めたと指摘するベンダーは多い。NECの伊藤統括マネージャは、「業種パッケージを持つパートナーやNECグループの販社による販売が好調だ」と語る。

キーワードは「運用管理」に

 今後のアプリケーションサーバーの要件について、日本オラクルの三澤智光執行役員システム事業推進本部長は「作って動かす、から安定運用に焦点は移っている」とする。同社はデータベースやERPなどとの連携性を前面に出して勝負する。

 三澤本部長は「SI企業はベストオブブリードで製品を組み合わせて使っているが、高いし、手間がかかるし、難しい」と指摘する。そこでオラクル製品で上から下までそろえれば、インテグレーションも運用管理も楽になる、と売り込む。

 「運用管理」は同社だけでなく、各社が重視するキーワードだ。富士通の川野俊文ソフトウェア事業本部ミドルウェア事業統括部第二ミドルウェア技術部長は、「今年は基幹系、それも中核のシステムをオープン化する動きが出ている。当社がメインフレーム時代から培ってきた、長く使えるシステムのノウハウが生きる」とアピールする。BEAの保阪武男マーケティング本部長も「パートナーの意見を反映して、障害時の稼働ログをサポート担当者に送信する機能などを追加した。また、OpenViewのサービス管理ツールとの連携も進めている」と語る。