恐るべき可能性?それとも使い道がない?議論を呼ぶ新サービス「Google Base」写真1●Google Baseの情報投稿/管理ページ。アカウント取得後は常にこのページがGoogle Baseのスタート・ページになる。ここでGoogle Base内の検索を行ったり,公開中/編集中の情報を管理できる
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米国11月15日の遅い時間,かねてから噂になっていた「Google Base」が公開された(関連記事)。Google Baseはユーザーが自分の情報を広く一般に公開できるようにするデータベース・サービス。これまでGoogle社内で試験運用を行っていたようだが,10月末にその一部が誤って公開され,噂が飛び交った(関連記事)。 正式公開後も,Google Baseはさまざまな議論を呼んでいる。「とてつもない可能性を秘めているのではないか」という意見もあれば,「おもしろいが,まだ使う必要性が思いつかない」といった具合。今回は各種メディアの情報を見ながらこのサービスについて考えてみたい。
わずか5分で公開まず,Google Baseがどんなものなのか簡単に見てみよう。写真1は,Google Baseの情報投稿/管理画面だ。下のドロップダウン・リストで情報の種類を選んだり,種類を新規作成し,次に現れる画面で詳細情報を入力。最後に「Publish」ボタンを押せば新たな情報が公開される。Google社の説明によれば15分ほどで公開されるとのことだが,筆者がやってみたところ,5分ほどだった。新規情報を追加した場合も,既存情報を修正して再投稿した場合も同じく5分程度ですんだ。 こうして公開された情報はGoogle Baseのページで誰もが検索できるようになる。また内容の関連性によっては,Googleの通常のWeb検索や,商品情報検索/比較サービス「Froogle」,地域情報サービス「Google Local」にも表示されるという。 なお投稿者が自分のWebサイトを持っていれば,そのURLを入力することで,検索結果にリンクが張られる。より詳細な情報が掲載されている自分のページにユーザーを誘導できるというわけだ。Webサイト持っていない場合は,単にURLを入力せずにおく。するとGoogleがその情報のページを生成してくれ,検索結果画面にはそのURLのリンクが張られる。 また投稿する情報には,ラベルや属性を付けることができる。例えばラベルは「料理のレジピ」,属性は「朝食」「主な材料:卵, 鶏肉」といった具合。これにより,ユーザーが絞り込み検索した際,各種の条件でヒットすることになる。ラベル/属性入力の際は,各候補がドロップダウン・リストで表示されるので便利だ。これら候補はダイナミックに提供される。つまり他の投稿者が多く選ぶポピュラーなものぼど頻繁にリストに登場することになる。 なお,もし投稿したい情報が大量にある場合,ブラウザでひとつ一つ入力するのではなく,ファイルに記述して一括アップロードできる。ファイルのフォーマットはTSV,RSS 1.0,RSS 2.0など標準的なものが使えるという。ちなみにこれら情報の投稿は,Webで逐一入力する場合も,一括アップロードする場合も無料。
クラシファイド広告市場に進出?以上ざっと見てきてなかなかおもしろいサービスとは思うが,これを何に使えば最適なのかと考えると悩んでしまう。自分のデータベースをWeb経由で外部のサーバーに保存しておけるのは便利そうだ。しかしGoogle Baseはあくまでも一般に公開するデータベース。顧客名簿も,会社で共有する書類も外部流出は御法度でGoogle Baseには不向きだ。Google社では一例として,自作の詩や料理のレシピなどの用途を挙げているが,こうしたものだけではせっかくのGoogle技術が少しもったいない気がする。 一方で,米New York Timesなどの米メディアがいち早くGoogle Baseを「クラシファイド広告」として報じていたのが記憶に新しい(関連記事)。クラシファイド広告とは,新聞などの三行広告のこと。内容は読者から寄せられた"売ります/買います",不動産の賃貸/売買,求人/求職などと幅広い。米国では 米craigslistがオンライン版クラシファイド広告の草分けで有名だ。米eBayも同社に投資するなど,この分野に注力している(関連記事)。Google社もこの分野を狙っており,これが既存業者の脅威になるとNew York Timesの記事は伝えている。 同記事によれば,クラシファイド広告の市場は年間1000億ドル規模。Web検索やcraigslist社サービスの出現によって業界にはすでに激震が走っているが,Google社が本格参入すれば,業界の様相はこれまでとまったく変わってしまう可能性がある。今,こうした見方が業界に広がっているという(掲載記事)。
Froogleの機能を拡充そんな懸念がまだ消えぬ米国時間22日,Google社が明らかにしたのが,Froogleの機能拡充「Froogle Local」だ(発表資料)。これは,Froogleの商品情報検索サービスに,店舗の地図情報を加えた形で提供するというもの。例えば検索語に「iPod Nano New York」と入れると検索結果画面では,左側にiPod Nanoを取り扱っているニューヨーク市内の店舗と商品情報が,右側には各店舗の位置を示す地図が表示される(写真2)。ユーザーがすぐに商品を欲しいときや,衣料品など試着してから購入したいもの,家具など送料が高くつくものの場合,近くの店を探せて便利とGoogle社は説明している。 このFroogle LocalはGoogle Baseを利用しているのがミソである。大量な商品/店舗情報は,販売業者などがGoogle Baseにアップロードし,それが自動的にFroogleに表示されるという仕組み(Google社の説明ページ)。New York Timesの別の記事によると,Google Baseにはすでに数百店舗の商品情報がアップロードされており,その中には,Best Buy,Circuit City,Home Depot,Bombay,CompUSAといった大手チェーン・ストアの情報が大量に含まれているという(掲載記事)。これを読んで,なんともうまいやり方を考えたものと感心してしまう。Google社は,Google Baseを使っていとも簡単にクラシファイド広告とショッピング・サービスの両分野へ進出してしまったからだ。
Google Baseの真の姿とはところがここで1つ疑問が浮かぶ。Froogle Localへの情報掲載は,Google Base同様無料である。Google社は,検索結果にスポンサード・リンクを設けることで収入を得ているが,情報の受け入れに関しては無料で行うという方針だ。無料であることから今後もさらに大量の情報がGoogle Baseに登録されていくものと考えられるが,同社はそれによって直接的な利益を得ない。 このことから,Google社の狙いは本当にクラシファイド広告/小売り市場への進出なのかという疑問が生じる。Google社が常に言っているのは,「世界中の情報を整理して,誰もがアクセスでき,便利に使えるようにすること」。その世界中の情報とは,「ユーザーが寄与したいと思うありとあらゆるもの」(掲載ページ)である。この理念と,クラシファイド広告/小売り市場とは少し関連性に欠ける気がする。 そこで筆者はこう考える。これまで同社は検索クローラーでWeb上の情報を収集し,その情報を対象にした検索サービスを提供してきた。今度は,紙などに記載されている商品情報や,これまでWebには載らなかったローカル・ディスクの情報を収集しようとしている。まさに"世界中の情報"である。しかも今度は,クローラーではなくユーザーの手を借りて自動的に吸い上げるという仕組みだ。同時にそれら情報は,ユーザーの手によってタグ付けされる。Google社が提供するのはその仕組みとプラットフォームだけ。これはTim O'Reilly氏の定義するWeb 2.0の定義の1つ,「顧客によるセルフサービスとアルゴリズム的データ管理を活用して,Webのすべてに手を伸ばすこと」(関連記事)と通ずるところがあるように思える。 こうして考えると,ユーザーがどんな情報をGoogle Baseに登録すれば最適なのかという前述の悩みは見当違いになってくる。Google Baseは,筆者のようなの1人のユーザーが自分で設計/構築し,自分や仲間のために使う"データベース・ソフト"ではない。それは世界中のユーザーから自動的に情報収集するという仕組みであり,またそれを世界中のユーザーに提供するというサービスである。これがGoogle社の考えているGoogle Baseの真の姿。そんな気がするのだ。 2014年までのネットとメディアの世界を描いたフラッシュ・ビデオ「EPIC 2014」の,EPICとは「進化型パーソナライズ情報構築網」(blog.digi-squad.comに掲載の日本語訳ページ)。こうしてGoogle Baseについてあれこれ考えていると,この近未来世界のストーリーがどうしても頭から離れない。筆者だけだろうか。
■著者紹介:小久保 重信(こくぼ しげのぶ)
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