写真  米Intel社のRichard Wirt副社長,シニアフェロー兼ソフトウェア&ソリューション事業部長
写真 米Intel社のRichard Wirt副社長,シニアフェロー兼ソフトウェア&ソリューション事業部長
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 米Intel社は3000名ものソフトウェア技術者を抱えている。Intelはソフトウ ェアで何を狙うのか。部門のトップ,Richard Wirt副社長,シニアフェロー兼ソフトウェア&ソリューション事業部長(写真)に戦略を聞いた。

Q マイクロプロセッサのIntelがソフトウェアで何をやろうとしているのか。

A これまで我々はマイクロプロセッサの性能を最大限引き出すためのコンパイラやライブラリ,チューニング・ツールを提供してきた。

 しかし,マイクロプロセッサには今やパフォーマンス以外の新しい付加価値が求められるようになった。具体的には仮想化,セキュリティがある。これらをソフトウェア開発者が存分に使えるようにするのもソフトウェアの役目だ。

 我々が焦点を当てる対象は広がりつつある。今はマイクロプロセッサだけでなく,チップセット,無線LANなどプラ ットフォーム全体の価値を上げることが求められている。例えば,Centrinoでは簡単に公衆無線LANサービスを見つけてアクセスする機能を提供した。

 電子機器で人の健康を監視・管理する,デジタルヘルス分野に向けた開発も必要になる。その基盤となる信頼性の高いCertified Linuxにも注力している。

Q 多岐にわたる開発をどのくらいの規模の組織で進めているのか。

A 約3000人だ。中堅のソフトハウス並みの人数だろう。ちなみに,マイクロプロセッサのデザイン・チームはおよそ1000人なので,その三つ分の規模に相当する。

Q Intelがソフトウェア開発を手掛けると,ISVの仕事を奪うことにならないのか。

A 我々が開発するのはいわゆるインフラに当たる。ISVのアプリケーションが効率よく動く環境を用意する。
 IntelはISVと敵対していない。むしろ仲間だ。彼らと密接に働くことで,今後プラットフォームに求められるものをいち早く察知し開発できる。一方ISVは,彼らのニーズに合致したプラットフォームを使ってパフォーマンスの高いソフトウェアを作れる。Intelのソフトウェア部隊3000名のうち1000人がISVとともに働いている。

Q 具体的には今,ISVからどのような要求があるのか。

A 例えば,XMLを高速に処理することだ。米BEA Systems社や独SAP社などはXMLでシステムを連携する方向でどんどん開発を進めている。Intelの内部ネットワークのトラフィックを調べてみると,すでに50%がXMLデータだった。ほかの企業でも同様の傾向だろう。

Q Intelはそれに対してどんな手を打つのか。

A XMLデータの効率的な処理をマイクロプロセッサで可能にする。そのために今年の8月にXMLソフトウェア会社,米Sarvega社を買収した。

Q 一体どんな機能をイメージしているのか。また,いつごろ搭載するのか。

A 命令一つで,XML文書を高速にパース(構造解析)し,データを迅速に操作できるようにする。また,これらがパラレルに処理されることも必要だ。搭載時期については言えないが,入れる計画で準備を進めている。

Q XML処理,仮想化,セキュリティ以外に新しく入れたい命令セットはあるのか。

A 今後のアプリケーションは .NETとかJavaといった仮想マシン上に作られていく。仮想マシン環境上のアプリケーションが高速に動作する機構を入れたい。