ハリケーン「リタ」襲来の数日前,テキサス州ヒューストンでは住民の避難が行われており,空港のセキュリティ検査を担当する職員約100人が出勤しなかった(おそらく避難したのだろう)。米運輸保安局(TSA)は急きょ代わりの検査担当チームをオハイオ州クリーブランドから派遣したものの,検査を待つ長蛇の列ができ,乗り遅れる乗客が出てしまった。

 なんて馬鹿げたことだろう。TSAには,特定の状況で“代替”検査手順を適用することが許可されている。単純な判定はできないが,非常時における最も賢明な対応策は,セキュリティ規則の適用を一時中止することだ。もちろんリスクをともなうけれども,このトレード・オフは合理的だ。

 セキュリティ規則を棚上げにしなかった理由は,課題の一例といえる。規則を一時的に棚上げして乗客を搭乗させることは合理的ではあるが,その決定を下す責任者は自分の職が危険にさらされることを心配する。もし何か起きていたら,たとえそれが起こりそうもない出来事だったとしても,責任者は解雇されていただろう。それに対して,責任者が規則を変更しなければ,何百人もの人々は乗り遅れるが,責任者個人には何の影響も及ぼさない。

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◆オリジナル記事「Hurricane Security and Airline Security Collide」
「CRYPTO-GRAM October 15, 2005」
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◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテックと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。