図 プッシュ・ツー・トークのしくみ
図 プッシュ・ツー・トークのしくみ
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 プッシュ・ツー・トークとは,複数の通話先を指定した後,全員を同時に呼び出して話しかけられる携帯電話の付加サービスである。2005年10月,NTTドコモが「プッシュトーク」,au(KDDI)が「Hello Messenger」というサービス名でそれぞれ提供を始めた。

 プッシュ・ツー・トークは,通常の電話と違って,通話が一方通行になる。プッシュ・ツー・トークが使える電話機には専用のボタンが付いていて,話者がそのボタンを押している間だけ全員に声が届く。別の人が発言するときは,話者がボタンを離すのを待って,自分の電話機のボタンを押す。

 しくみを見ていこう(図)。プッシュ・ツー・トークでは,IP電話で相手を呼び出すときに使うSIP(session initiation protocol)というプロトコルを利用する。端末aがアドレス帳で端末b,c(の電話番号)を選んで発信すると(図の1),aはSIPサーバーを経由して制御サーバーにログインし,b,cを呼び出すように要求する(同2)。制御サーバーは要求を受けると,a,b,cを通話グループAとして登録し,a,b,cがAとして登録されたことをaに伝える(同3)。それと同時に,Aのメンバーであるb,cを呼び出す(同4)。b,cは着信を受け付けると,SIPサーバー経由で制御サーバーに応答メッセージを返信。これでa,b,cがつながった状態になる。

 その後,aが専用ボタンを押しながら話すと,その音声パケットは制御サーバーに届く(同5)。制御サーバーはこれをコピーして,b,cに送る(同6)。通話が終わると制御サーバーはAのデータを消去する。例えば,aが専用ボタンを離し,続いてbが専用ボタンを押しながら話すと,今度はbから音声パケットが制御サーバーに届き,そこでコピーされてaとcに届く格好になる。

 使い方から見ると,プッシュ・ツー・トークは,電話というよりトランシーバに近い。急ぎの要件を複数の人に伝えたいときなどに便利である。ただし,現状は携帯電話会社が異なると通話できない。