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写真1●The Student Day 2005のオープニングは「United Spirit All-Star チアリーダーズ」の演技で始まった。イベントを通して,とにかく元気で派手な演出
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 学生が開発するソフトウエアほど,おもしろいものはありません。その着想といい,その機能といい,だんだん固くなりつつなる私の頭を,ガツンガツンと刺激してくれます。学生が主役のプログラミング・コンテストにはできるかぎり顔を出したい今日このごろです。

 そして今回も,マイクロソフト主催のイベント「The Student Day 2005」に出かけてきました(写真1[拡大表示])。このイベント中に,Imagine Cup 2005の国内最終予選があります。大学生が中心のコンテストとあって,夢はあるけどしっかり地に足もついているという感じ。ここから実際に社会に飛び出すソフトウエアもありそうですぞ。

学生対象の技術コンテスト「Imagine Cup」

 Imagine Cupは,米Microsoftが主催する,世界中の学生を対象とした技術コンテスト。2003年,スペインのバルセロナでスタートした世界大会のときはソフトウェア デザイン部門だけだったのですが,2004年のブラジルでの世界大会では4部門,2005年の今年は9部門と年を追って規模が拡大されており,学生の間でも注目のコンテストとなりつつあります。だって世界大会への出場権を得たら,海外へ行けるんですもの,力が入って当然です。

 その9部門の内容ですが,ソフトウェア デザイン部門,アルゴリズム部門,ショート フィルム部門,レンダリング部門,Officeデザイナ部門,テクノロジ ビジネス プラン部門,IT部門,ヴィジュアル ゲーミング部門,Web開発部門——があります。必ずしもプログラミングだけにとどまらず,学生が自分の得意分野で幅広くエントリできるようになっているのが特徴です。

 さて,2005年3月30日,東京は文京区の文京シビックホールにて,このImagine Cup ソフトウェア デザイン部門の国内最終予選が行われました。予備審査で選ばれた3チームが,審査員や観客の前でプレゼンテーションを行います。両者の審査の結果で見事優勝を果たしたチームが,7月下旬に横浜で行われる世界大会に参加できる権利を獲得できるというわけです。そう,今年は世界大会の会場が横浜なのです,学生にとってはちょっと残念?

国内最終予選に残った三つのソフトウエア

 栄えあるファイナリストに選ばれたのは,(1)慶應義塾大学チーム,(2)大阪大学大学院チーム,(3)南山大学チーム——の3チーム。最終予選における各チームの持ち時間は6分間で,エントリしたソフトウエアの概要とデモンストレーションのプレゼンテーションを行います。では,それぞれの作品を見ていくことにしましょう。

 まずは慶應義塾大学チーム(武田林太郎さん,津田恵理子さん,藤原育美さん,渡辺正毅さん)。彼らのエントリ作品は携帯電話のGPS機能を利用した携帯ソフトウエア「あしあと」です。コンセプトは「場所に残された思い出の発見」。「あしあとを残す」「あしあとを発見する」「友達機能」——と大きく三つの機能を備えています。街や旅先を歩いていて,「ここに来たことを思い出に残しておきたい」という場所に出会ったら,地図にマークを付けてコメントを残します。その情報は基本的に公開されていて,ほかの携帯電話ユーザーが「あしあと」の取得を試みると誰かが街に残した「あしあと」を自由に閲覧することができます。

 知らない人の「あしあと」が必要ない場合は,あらかじめ友達を登録しておいて,友達の残した「あしあと」だけを表示させます。それが「友達機能」です。これで「マサオくんたら,こんなところで彼女とデートしてるのか」なんてことが発見できます。現在はJavaが動く一部のauの携帯電話でのみ動きますが,将来的にはNTTドコモやボーダフォンなどの携帯電話もサポートする予定だそうです。

 そもそもこのソフトウエアを開発したのは,メンバーの渡辺正毅さんがぶらぶらと街を歩いていたときに何をしていいかわからなくなって,なにか目印になるものがあればいいのにと思ったのがきっかけだったとか。これはまた「人を幸せにするソフトウエアとは?」という彼らが大学で追求している研究テーマの一環でもあったそうです。

 個人的には,「あしあとを消す」機能も入れておいて欲しいなーと思いました。あしあとを残した本人であれば,それを消去することもできる機能。だって,そのときはよかったけど,後から忘れたくなる思い出だってあるじゃありませんか。と,隣の(やざ)記者に訴えたら,「それは吉田さんがうんと大人だからです」といわれてしまいました。ふんだ,みんなが考えているより人生は複雑なのよ。