会場となった会津大学から見た磐梯山(写真提供:福島県)
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審査委員長の松本零士先生による記念講演(写真提供:福島県)
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リスト1 審査委員特別賞を受賞したプログラム
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(写真提供:福島県)
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本選結果(写真提供:福島県)
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(写真提供:福島県)
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(写真提供:福島県)
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CG・コンテンツ部門で特別賞のCG作品
CG・コンテンツ部門で特別賞のCG作品
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 2003年11月22日~23日の2日間にわたり,福島県会津若松市で「パソコン甲子園2003(全国高等学校パソコンコンクール,http://www.pref.fukushima.jp/pc-concours/)」の本選大会が開催されました。審査委員の一人として参加した筆者が,熱戦の模様をレポートします。とにかく,とっても楽しいイベントでした!

パソコン甲子園とは?

 パソコン甲子園は,高校生がプログラム作成能力とパソコンによる表現能力を競い合うコンクールです。福島県,会津大学,および全国高等学校パソコンコンクール実行委員会の主催で,会津大学の創立10周年記念イベントを兼ねて開催されました。今回が第1回目となります。

 競技種目には,3名のチームでプログラムの作成能力を競う「プログラミング技術部門」と,2名のチームでCGやWebページなどの創作能力とプレゼンテーション能力を競う「CG・コンテンツ部門」があります。郵送された作品を審査する形式で行われた予選大会には,両部門合わせて全国から247チームが応募し,その中からプログラミング技術部門20チーム,CG・コンテンツ部門15チームが勝ち残り,本選大会の会場である会津大学へと集結しました。

地味ながら熱い——プログラミング技術部門

 初日はプログラミング技術部門の競技です。出題数はなんと全100問(1000点満点)!「階乗の計算」「うるう年の判定」といったやさしい問題から,「魔方陣の作成」「ナップザック問題」といった難しい問題まで難易度が3段階に分けられています。参考書の持ち込みは認められていますが,制限時間4時間のうちに,すべてその場でプログラムを作成しなければなりません。使用できるプログラミング言語はBASIC,Visual Basic .NET,C言語,C++,Javaのうちのいずれか。当然,難しい問題ほど点数が高くなっています。

 やさしい問題をたくさん解こうか,それとも思い切って難しい問題に挑戦しようか…選手たちは,真剣な表情で問題を読みアルゴリズムを考え,できたと思った時点でパソコンに向かってプログラムを打ち込みます。3名のチームに1台ずつ与えられたパソコンを交代で使うので,チームワークも重要です。会場内の大きなスクリーンには,各チームの得点が刻々とグラフ表示されていきます。観客席では,引率の先生がかたずをのんで見守っています。シーンと静まり返った雰囲気の中で,熱い熱い戦いが繰り広げられました。

 「10秒前…3,2,1,0,はい終了です」というアナウンスで,あっという間の4時間が過ぎ去ると,いままで静まり返っていた会場には,待ちかねたように大きな拍手と歓声が響き渡りました。見事1位(グランプリ)を獲得した愛媛県立松山工業高等学校の「チーム紘一」は210点。審査委員の筧捷彦先生(情報処理学会情報処理教育委員会委員長,早稲田大学理工学部コンピュータ・ネットワーク工学科教授)を驚かせるほどの好成績でした。2位(準グランプリ)の石川県立金沢泉丘高等学校「金沢泉丘コンピュータ部」は,わずか10点差の200点で惜しかった。3位の国立豊田工業高等専門学校「inc toyota ( )」は,辞書を片手に健闘した留学生チームでした。みんな,がんばったね!

 「五つの数値をソートして表示する」という問題(これはやさしい問題に属します)は,特別賞の対象になっています。最も短いプログラムを作成したチームが受賞しました。特別賞のチームがC++で作ったプログラムのソースコードをお見せしましょう(リスト1)。皆さんだったら,すぐにここまで書けますか? いまどきの高校生は,なかなか立派なものです。

華やかながら厳しかった——CG・コンテンツ部門

 一夜明けて2日目は,CG・コンテンツ部門の競技です。テーマは「2020年ハイスクール(未来の高校生活)」。NHKのアナウンサーが司会者で,会場を大いに盛り上げました。地味なプログラミング技術部門と比べて,実に華やかな雰囲気です。参加チームは,7分間の制限時間内に,CGやFlashを駆使した作品を上映しながらプレゼンテーションを行います。いまどきの高校生は,絵もうまければ話もうまい。それに加えて,ユーモアのセンスも抜群です。

 漫画家の松本零士先生を審査委員長とする総勢5名の審査委員は,入賞者の決定にかなり頭を悩ませました。これもいい,あれもいい…作品が優れているだけに,審査もかなり厳しくなります。時間をかけて作成された細かなCGであっても,見る人の心を打つものがなければ高い評価は得られません。プロ並みの完成度を持った作品でありながら,入賞を逃したチームもありました。この悔しさをバネにして,これからもがんばってほしいですね。

来年もパソコン甲子園をめざせ!

 宿泊先のホテルでは,選手とスタッフを交えて盛大な懇親会が開催されました。ご当地名物の会津鶴ヶ城太鼓の勇ましい演奏の後は,チームごとにプラカードを持って壇上で自己紹介タイムです。「元気に行きましょう」「友達作りましょう」「がんばりましょう」…競技中の緊張感から解放され,高校生らしい若さに満ち溢れたスピーチです。若さって本当に素晴らしい。

 引率の先生に「パソコン部ですか?」とお聞きしたところ,「いえいえ物理部なんですよ」との返事。どうやら,パソコン部が単独で作れない学校が多いようです。これからは,パソコン甲子園という全国大会を目指して,全国の高等学校にパソコン部が続々と誕生することでしょう。今回の大会に参加された皆さんは,まかりなりにも“甲子園”に出場したのです。勝ち負けにこだわらず,参加できたことに誇りを持ってください。とってもカッコよかったですよ!

(写真提供:福島県)

矢沢 久雄(やざわ ひさお)

グレープシティ(http://www.grapecity.com/japan/)のアドバイザリースタッフ。