●「トラックバックスパム」とは
●「トラックバックスパム」とは
[画像のクリックで拡大表示]

 利用者が470万を超え*1、すっかりおなじみになった簡易版ホームページサービス「ブログ」。思い立ったら誰でもすぐ作れる、更新も簡単、しかもタダという手軽さが受け、情報発信初心者のみならず、従来のホームページをたたんで移行する人も増えている。ところが、このブログ人気にあやかり、一儲けを目論む迷惑な輩が現れた。あのうっとおしい迷惑メールを送りつけるスパム業者だ。

 ブログの特長の1つに「トラックバック」と「コメント」という機能がある。トラックバックは、自分のブログから他人のブログにリンクを設定する機能。コメントはブログに感想などを読者が書き込む機能で、いずれもブログ開設者同士のコミュニケーションを図るための仕組みだ。スパム業者はこの仕組みに目を付けた。人気ブログのコメント欄にアダルトサイトへのリンクを残したり、まったく関係のない自サイトにトラックバックリンクを設定するのだ。

コメントにアダルトリンク

 スパム業者の狙いは、自サイトへの誘導。加えて、複数のサイトとリンクを設定することで、自サイトがGoogleなどの検索結果の上位に表示されるようになることまで狙っている。最近では、バナー広告やテキスト広告しか中身のない、「フェイクブログ」まである。自サイトへのリンクを掲載した、同じ内容のブログを大量に開設し、ちまちま自サイトへのアクセスを稼ぐ仕組みだ。フェイクブログが削除されても、業者は別の利用IDを取得したり、違うサービスに乗り換えて同じことを続ける。

 ブログ先進国の米国では、2004年後半からこのような「ブログスパム」が急増。日本では、ブログの普及が加速した今年に入って散見されるようになり、ここ半年で一気にその数が増した。

 スパム攻撃には、ユーザー側で特定のIPアドレスからトラックバックを受け付けない、あるいは指定した単語を含むコメントを自動削除するといった事後対策や、サービス提供側の専用フィルターによるスパムブロックしかない。ブログのASPサービスを提供するシックス・アパートでは、9月から提供開始した「Movable Type 3.2」で10段階にレベル設定可能なスパムフィルターを実装。「gooブログ」を運営するNTTレゾナントでは、フェイクブログ対策として「ブログ開設時に専用フィルターで検閲し、9割は削除している」(パーソナル事業部の村井説人チーフプロデューサー)という。

 とはいえ、次々と新手を編み出すスパム業者とイタチゴッコが続いているのが現状。最終的には「迷惑メール対策同様、学習型のフィルターを用意して、ブロック機能を強化するしかない」(シーサーの舟田善チーフプロデューサー)。

 現在のブログサービスはどこも似たり寄ったりで特徴がない。これからは、有効なブログスパム対策の有無が差別化の条件となるかもしれない。

*1 2005年9月末段階、総務省調べ