図 Skypeのシステムを構成する要素と役割
図 Skypeのシステムを構成する要素と役割
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 Skypeは,世界中で爆発的にユーザー数を増やしている無料インターネット電話サービスである。ルクセンブルクのスカイプ・テクノロジーズが開発し,2003年8月にサービスを始めた。同社によれば,クライアント・ソフトのダウンロード数は延べ2億回を超え,400万以上のユーザーが同時にログインしてサービスを利用しているという(2005年11月時点)。

 このSkypeは,(1)ユーザーがいくら増えてもサービスが重くならず無料で利用できる,(2)社内ネットや家庭のようにファイアウォールやアドレス変換装置(BBルーターなど)がインターネットとの間にあっても利用できる,(3)通話するときの音質が既存の電話より良い --- という従来のインターネット電話の概念をくつがえす特徴を備えている。こうした特徴を実現するカラクリは「P2P技術」にある。ユーザー同士の通話はもちろん,それ以外のさまざまな機能をP2P技術によって処理している。

 サービスを構成する要素は三つある。Skypeクライアント,ログイン・サーバー,スーパー・ノードである(図)。Skypeクライアントは,ユーザーがパソコンにインストールする専用ソフト。インストールすることで音声通話に加えて,チャット,ファイル転送,プレゼンスといった機能が使える。

 ログイン・サーバーは,Skypeクライアントからのログイン要求を受け付けてユーザーを認証をするためのサーバーである。このログイン・サーバーだけが常に同じ場所にある固定的なサーバーとなる。ログイン・サーバーは,認証をクリアしたSkypeクライアントに対して,ほかのクライアントと安全に通信できるように「暗号鍵」を渡す役割も担っている。

 スーパー・ノードは,「通話先リストの管理」や「通話相手の呼び出し」,「音声の中継」など,さまざまな役割をこなすSkypeサービスの中核的な存在である。その実体は,インターネット上にあるユーザーのSkypeクライアントである。Skypeクライアントが稼働するクライアント・パソコンのうち,グローバルIPアドレスを持つこと,十分な処理能力や回線速度を持つこと,長時間安定して稼働していることなどの条件を満たすパソコンが任意に選ばれる。

 ほかのSkypeクライアントはログインしたあと,これらのスーパー・ノードから最低1台を選んで接続する。以後は,このスーパー・ノードとの接続を常時保ちつつ,必要に応じて通話先情報を問い合わせたりする。