個人情報保護法を背景に、IP網を使った映像監視ソリューションの需要が伸びている。しかも一時の特需では終わりそうにない。防犯・監視に加えて、店舗運営支援や情報分析といった「攻めのIT投資」の取り込みに成功し始めたからだ。顧客の業務を知れば新たな商機が広がる。



 防犯カメラから業務向けまで、多目的に使える映像監視ソリューションの需要が好調に推移している。2年前からソリューションの提供に乗り出した伊藤忠テクノサイエンス(CTC)は「今年に入り引き合いの数は昨年の2倍~3倍に急増した」(ネットワークシステム第2部の溝井英一部長代行)と手応えの大きさを実感している。

 現在の「特需」をけん引しているのが、今年4月に施行された個人情報保護法だ。昨年から企業で相次いだ情報漏洩事件の多くは、内部にも犯行に関与した者がいたことから「情報システムの堅牢性だけで、情報漏洩は防げない」ということを、改めて企業に強く印象づけた。このため、オフィス内部のセキュリティを全面的に見直し、入退場管理などと合わせて映像監視ソリューションを多地点に導入する顧客が増えているという。

医療機関にも「特需」の期待

 こうしたセキュリティに対する特需は、警備会社の契約件数からもうかがえる。遠隔監視と異常検知時の「駆け付けサービス」をセットにしたオンライン警備の最大手であるセコムは、今年第1四半期に法人契約を1万4000件増やした。年換算の増加ペースは5万6000件と、昨年度の1.8倍という急増ぶりだ。個人情報保護対策という背景から「本来の夜間警備に加えて、業務時間内の監視サービスを受注したり、入退場管理システムなどと組み合わせて納入したりする商談が増えた」(セコムグループ広報室の安田稔室長)という。

 個人情報保護法の施行から既に半年が経過したが、「映像監視を使ったセキュリティ商談は、特需がもう少し続く」という意見もある。対応が不十分な中小企業向けの商談に加えて、「膨大な電子カルテを抱える医療機関など、取り組みが遅れている業界に向けた商談が本格化する」(NEC)との見方からだ。