NTTグループが11月9日,2004年11月に明らかにした「中期経営戦略」の推進について詳細な内容を発表した(関連記事)。中期経営戦略で掲げた「2010年までに光ファイバで3000万加入」という目標に対する具体的な取り組み内容である。

 発表会に臨んだNTTの和田紀夫社長は,今回の体制変更を「グループ内の役割の整理」と表現した。1999年に施行されたNTT法の枠を維持しながら,これまでグループの各社が各様に手がけてきた事業を,役割の名の下に明確に振り分けた。

 最も目を引いたのは,固定/移動のシームレスなサービスを提供する次世代IPネットワークをNTT東西とNTTドコモが構築するという枠組み。新しいIPネットワークは電話回線に代表されるツリー型の網構成ではなく,光回線を使ったフラットな構成を取るという。

 そして発表会の席上,和田社長の口から気になる表現が飛び出した。「新しいフラットなネットワークでは中継系の重みが減る」−−。新ネットワークでは,光ファイバの波長多重技術を使ってデータを高速転送するため,従来ほど中継系ネットワークに大規模なインフラは要らなくなる。この一言は,これまでグループ内で中継系ネットワークを担ってきたNTTコミュニケーションズ(NTTコム)の存在意義を脅かしかねない意味を持っていた。

 NTTコムは今回の整理で次世代ネットワークの構築からは外れ,インターネット接続や050番号のIP電話,ポータル・サービスなどの「上位レイヤー」サービスのほか,法人向けサービス,国際サービスを担当することになった。今後は東西NTTとNTTドコモが作る次世代ネットワークを社内から“調達”して,ユーザーにサービスを提供する格好になる。

 NTTコムが任されたインターネット接続やIP電話,ポータル・サービスはどれも競争が激しい分野。実はOCNやぷららなどNTTグループ内にあるインターネット接続サービスの統合は,2002年の時点で方向が打ち出されていた(関連記事関連記事)。ようやく統合という結論にこぎつけた3年半の間にも,市場環境は変化。NTTグループが得意とするインフラ・ビジネスとは別の次元で,業界地図が描かれている。グループ内に分散していた部門を集約する法人サービスでも,体制見直しが必須になる。

 NTTグループの光ファイバ3000万世帯という大目標達成も気になるところだが,新たなビジネス展開を迫られることになったNTTコムのこれからも見守る必要がありそうだ。

(松本 敏明=日経コミュニケーション 副編集長)