表●全省庁の汎用電子申請システムの2004年度の利用実態とコスト(内閣府のみ回答せず)
表●全省庁の汎用電子申請システムの2004年度の利用実態とコスト(内閣府のみ回答せず)
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e-Japan戦略の大きなテーマの一つが政府の電子申請システム。その2004年度の平均利用率が1%未満であることが本誌の調査で分かった。電子化そのものが目的化し、電子申請システムをテコにした業務の効率化が一向に進んでいない実態が浮き彫りになった形だ。

 調査は、中央官庁が構築した電子申請システムを対象に実施したもの。10月13日から10月末にかけて、全省庁に開発費や運用費と、2004年度(3月期)の利用実態を聞いた。全15省庁が保有する汎用電子申請システムのうち、利用率を回答した9省庁の単純平均は0.9%(表)。03年度の平均利用率0.7%(総務省調べ)から、大きな変化はない。内閣府は回答せず、残り5省庁は利用率を「不明」とした。

 余りにも低い利用率に対し、政府はこの7月、各省庁に実態改善に向けた指示を出している。「オンライン利用促進対象手続き」がそれで、申請件数が年10万件以上ある手続きを、電子申請システムへ誘導するよう求めた。だが、利用率という新たな数値目標は、各省庁には高いハードルだ。

 最も利用率が低かったのは、法務省の0.0005%で、電子申請件数は年間2000件。農林水産省(利用率は0.002%)、文部科学省(同0.04%)、外務省(同不明)においては、電子申請件数は1ケタ台だ。逆に、最も利用率が高かったのは公正取引委員会の4%。実際の電子申請件数は3000件である。

 一方、電子申請件数が最も多かったのは金融庁の7万件。それに厚生労働省の2万9000件が続く。ただし、両省庁とも利用率は「不明」とした。郵送などによるもともとの申請件数が膨大だからだ。例えば、厚労省の「健康保険・厚生年金保険被保険者の月額報酬の届出」の年間申請件数は3300万件超。これだけを母数にしても同省の汎用電子申請システムの利用率は1%に満たない。

 これらシステムの構築コストは、ほとんどが億単位。中には農水省のシステムのように“安値入札”の批判が出ても不思議はない110万円のものもあるが、文科省は7億6000万円、厚労省は11億円である。

 利用率が低い背景には、e-Japan戦略!)が定めた「申請手続きのオンライン化率を2003年度末までに97%に引き上げる」という数値目標がある。05年3月時点の電子申請化率は96.2%と目標をほぼ達成したものの、とにかく申請手続きを電子化することだけを急いだ結果が、利用率を低迷させている。

 実際、各省庁が独自に電子化を進めてきた特定業務向けの電子申請システムの利用率は比較的高い。例えば、農水省が持つ「漁獲管理情報ネットワークシステム」の年間電子申請数の利用率は99%と、ほぼ全数がオンライン申請になっている。