写真 米インテルのショーン・マローニ主席副社長兼モビリティ事業本部長(撮影:木村輝)
写真 米インテルのショーン・マローニ主席副社長兼モビリティ事業本部長(撮影:木村輝)
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 無線LANシステムを使うモバイル・セントレックスの登場や公衆無線LANサービスの拡大など,ここ最近無線LANが注目が集まる機会が増えている。背景には,個人・法人ともに無線LAN機器を使うユーザーが爆発的に増えていることがある。無線LAN内蔵のノート・パソコン向けブランド「Centrino」を提供する米インテルで,ノート・パソコンや携帯電話などのモバイル事業を担当するショーン・マローニ主席副社長に,無線LANを取り巻く動向と今後の戦略を聞いた。(聞き手は白井 良=日経コミュニケーション

−−無線LANの普及が進んでいるが,電波には限りがある。電波干渉の発生や容量不足に陥らないだろうか。

 確かに電波干渉や容量の問題は,無線LANには常につきまとう。そこで次世代の「Centrino」では,一つ手を打とうと考えている。

 今のCentrinoでは,電波を受信できるアクセス・ポイント(AP)のうち最も信号電力が大きいAPを探して接続している。しかしユーザーのスループットを最大化するには,このやり方は賢明ではなかったかもしれない。信号電力だけでなく電波干渉やトラフィック状況なども見て,最も高いスループットを期待できるAPに接続するようにすべきだった。Centrinoの次の製品は,まさしくこうした技術を搭載したものになる予定だ。2006年の早い時期には,リリースできるだろう。

 さらに将来を見据えて,アンテナ技術による対策にも取り組んでいる。具体的には,アンテナから送出する信号に指向性を持たせて小さなセグメントだけに飛ばす方法を検討している。究極的には,ユーザー1人だけを狙えるようになるだろう。こうした技術が完成すれば,既存の周波数をより有効活用できるようなる。

−−無線LAN上での音声通信が登場しつつある。インテルもこの分野に取り組むのか。

 論理的に考えると,全てのトラフィックをIPネットワーク上でやり取りする方向に行くのは間違いないだろう。無線LANを搭載した携帯電話機やIP電話機は,確実に普及していくと考えている。しかし無線LAN上に音声を乗せる技術はまだ成熟していない。今後さらなる努力が必要だ。我々も,将来のCentrinoの課題ととらえている。

−−公衆無線LANサービスを面的に展開する動きがあるが,どう見ているか。

 将来は,全ての都市でこうしたサービスが登場していくと見ている。近距離で通信する無線LANだけのサービスではなく,遠くまで電波を飛ばせる無線ブロードバンドの「WiMAX」と融合した形になっていくだろう。

 確かに無線ブロードバンド・サービスに対して懐疑的な意見もある。革新的なサービスの初期に,こうした意見が出るのは昔からあったことだ。かつて米国で実業家のウエスティングハウスが家庭向け電力供給サービスを始める際,「そんなものは必要ない」という意見が数多くあったという。無線ブロードバンドへの反応もこれと同じだ。

 しかしまだ始まったばかりで,技術的な課題が山積みなのも事実だ。携帯電話と同じように,ユーザーが意識することなく接続できるようにならないと大きな普及は望めない。こうしたサービスが便利に使えるような,新しい端末の登場も必要だ。サービスについてどうこう言うのは,今の段階では時期尚早だろう。