多数のIT関連資格が乱立する中、ビジネスに本当に役立つ資格は何か。それを探るために、日経ソリューションビジネスは2005年10月、上場およびそれに準ずる有力ソリューションプロバイダ134社に対して「IT関連資格の有効性に関するアンケート調査」を送付し、72社から回答を得た(有効回答率54%)。その結果、技術職に取らせたい資格の1位は「情報処理技術者試験プロジェクトマネージャ」、営業職に取らせたい資格の1位は「情報処理技術者試験初級システムアドミニストレータ」となった(該当記事)。

公的資格の一時金は減額傾向

 資格取得の奨励策として最も一般的なのは、やはり金銭面での支援だ。資格を取得した社員に対して毎月手当を支給するパターンと、取得時に一時金を支給するパターンとがあるが、毎月手当を支給する企業は少数派だ。今回の調査でも、毎月の手当を支払っている企業は72社中10社に過ぎなかった。しかも手当を支給する資格は多くの場合、情報処理技術者試験などの公的資格に集中している。


表1●資格取得時に支給される一時金の平均額(公的資格および非ベンダー系)
 公的資格および非ベンダー系資格に対する一時金の額は、全体に減少傾向にある。平均値を金額の高い方から並べた順番は昨年調査とほとんど同じだが、ほとんどの資格で絶対額が減った(表1[拡大表示])。中でも目立つのは「技術士」と「情報処理技術者試験システム監査技術者」だ。それぞれ28万3900円から23万4000円、19万5300円から10万5000円という激減ぶりだ。その他の資格では、おおむね1割程度の減少にとどまっている。

 ほぼ前回並みの金額を維持した資格は「情報処理技術者試験システムアナリスト」とPMP、初級システムアドミニストレータの3つ。そして増額された資格は、ITコーディネータと、ベンダー中立のLinux関連資格「LPIC(Linux技術者認定)レベル2」だけだった。前者は15万円から16万1000円に、後者は4万7400円から5万7000円に増えている。

 資格取得に必要な受験料などを補助する制度は、72社中46社が採用している。「事業部門のビジネスの状況に応じて、必要な資格を判断する」といった柔軟な運用がしやすい点がメリットだ。

ベンダー系資格の一時金は上昇


表2●資格取得時に支給される一時金の平均額(ベンダー系)
 興味深いのは、ベンダー系資格の取得に対する一時金の額が、全体に増加傾向にあることだ。もともと、公的資格に比べてベンダー系資格に対する一時金の額は低いという傾向があったが、それが変わり始めている。表2[拡大表示]にある、一時金が6万円以下の資格のほとんどは、前回から1万円前後金額が増えている。ただし、もともと一時金が高額な資格では、金額が減少する傾向がある。特に顕著なのはシスコシステムズの資格だ。「シスコ認定Expert(CCIE)」が13万3800円から11万8000円、「シスコ認定Professional(CCNP、CCDP、CCIP、CCSP)」が7万1800円から5万8900円にそれぞれ減っている。

 一時金が比較的高額な資格の中で、金額が増えたのはORACLEMASTER(データベース管理) Platinumだけだ。前回の9万4700円からやや増えて9万9000円になった。

 ベンダー系資格の中で最も大きく増額された資格は、「RHCE(Red Hat認定エンジニア)」で、前回の6万1300円から8万5800円と急増した。