ボストン運輸局(BTD)が担当するさまざまな仕事の中に,駐車違反チケットの発行業務がある。駐車違反の未払い罰金があまりに多い自動車に対しては,車輪に「Denver Boot」(輪留めの一種)を取り付けて移動できないようにする。違反者が罰金をすべて支払い終えると,BTDはDenver Bootを外す。

 記事末に紹介した写真の白いSUV(Sport Utility Vehicle:スポーツ多目的車)は,BTDが所有している自動車だ。BTDはこの自動車を使い,Denver Bootを装着すべき自動車を探す。屋根に2台のビデオカメラが取り付けてあり,ナンバー・プレート読み取りソフトウエアの動くノート・パソコンにつながっている。このSUVの運転手は市内を流してナンバー・プレートを読み取り,罰金未払いデータベースと読み取り結果を比較する。一致する車を見つけると,BTDの担当者が車から飛び降り,いまいましい違反者の車にDenver Bootを取り付ける。写真では,SUVの後ろにある車の右前輪にDenver Bootがかすかに見える。

 この種の行為を私は「大規模捜査」(wholesale surveillance)と呼んでいる。ナンバー・プレート読み取り装置については昨年記事にした。

 BTDのSUVを撮影したRichard M. Smith氏は,2004年の夏にBTDに対し,この車を使って収集したナンバー・プレートのデータベースを公開するよう要求した。そのときBTDは,「データベースの所有権はナンバー・プレート読み取りソフトウエアを開発したカナダAutoVu Technologiesにあるので,公の記録ではない」と回答した。このソフトウエアは,ベータ・テストの一環としてボストン市に貸与されたものだそうだ。

 AutoVu社が米ChoicePointのような企業にこのデータを転売する疑いはないだろうか?

AutoVu社:
http://www.autovu.com

このナンバー・プレート読み取りソフトウエアに関するBoston Globeの記事:
http://www.autovu.com/website/content/pressreleases/...

BTDが使用している白いSUVの写真:
http://www.computerbytesman.com/privacy/...

「大規模捜査」に関する過去記事:
http://www.schneier.com/essay-057.html>(訳注:日本語訳は「ナンバー・プレート読み取り“ガン”とプライバシ」

Copyright (c) 2005 by Bruce Schneier.


◆オリジナル記事「Automatic License Plate Scanners」
「CRYPTO-GRAM October 15, 2005」
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◆この記事は,Bruce Schneier氏の許可を得て,同氏が執筆および発行するフリーのニュース・レター「CRYPTO-GRAM」の記事を抜粋して日本語化したものです。
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◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテックと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。