写真1●岡山県倉敷市 総務局総務部情報政策室兼政策審議監主任 高木浩氏
写真1●岡山県倉敷市 総務局総務部情報政策室兼政策審議監主任 高木浩氏
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写真2●新施設・講座予約システムの画面(<a href="http://k-of.jp/kof.html" target="_blank">関西オープンソース2005</a>での高木氏による講演より)
写真2●新施設・講座予約システムの画面(<a href="http://k-of.jp/kof.html" target="_blank">関西オープンソース2005</a>での高木氏による講演より)
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写真3●安価購買支援システムの仕組み(&lt;a href="http://k-of.jp/kof.html" target="_blank"&gt;関西オープンソース2005&lt;/a&gt;での高木氏による講演より)
写真3●安価購買支援システムの仕組み(<a href="http://k-of.jp/kof.html" target="_blank">関西オープンソース2005</a>での高木氏による講演より)
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 「新施設・講座予約システムの構築コストは旧システムの10分の1だった。運用コストは4分の1の見込み」---岡山県倉敷市 総務局総務部情報政策室兼政策審議監主任 高木浩氏は,LAMP(Linux,Apache,MySQL,PHP)などのオープンソース・ソフトウエアを利用した新施設・講座予約システムの価格対効果をこう語る。同市ではスポーツ施設などの予約システムの再構築を進めており,現在運用テスト段階に入っている。

要求仕様は市で作る

 10分の1という大幅なコスト削減は,もちろんオープンソース・ソフトウエアによるソフトウエア・ライセンス・コストの削減だけでは実現できない。高木氏は,民間から市職員に転じたIT経験者である。高木氏らが「システム開発コストの適正化」を掲げ,要件仕様の策定から基本設計までを市で行い本当に必要な機能を過不足なく設計,かつそれを実現できるベンダーの選定を追及した結果である。

 また倉敷市では,インターネットで調達情報公開や見積受け付けを行うことで調達コスト削減を図る「安価購買支援システム」を開発している。こちらもPHP,MySQL,Linuxを採用している。

LAMPでシステムを構築できるベンダーを探す

 倉敷市の「倉敷ネット」は1998年にスタートした施設・予約システムである。同市が予約システムのリニューアルを行った理由は2点ある。ひとつは,開発当初の予想を大きく超えるアクセスにより,現行システムの安定性が損なわれていること。また,無駄なランニング・コストが発生していたこと。市民が使う画面はWebブラウザだったが,市職員が使用するクライアントはJavaアプリケーションで,トラブル発生により情報政策室の工数が発生していた。またパッケージをカスタマイズしており,開発ベンダーとのメンテナンス契約を毎年更新していた。

 コストを抑えるため,高木氏らはユーザー・インタフェースはすべてWeb化することや,オープンソースのデータベースや開発言語を使用することなどを要求仕様(RFP)として策定した。PHPやLinuxは市役所内で小規模に使用した実績はあったが,大規模なシステムを構築した実績はなかった。高木氏らは,オープンソースによるシステム構築の実績を持つ様々なベンダーにRFPを満たす提案の提示を求めた。検討の結果,MySQL,PHP,MIRACLE LINUX,Navicatなどの構成を提案してきた大阪のスマートスタイルをベンダーとして選定した。構築費用は約2500万円で,旧システム約2億5000万円の約10分の1だった。

 安価購買支援システムは,物品などの調達情報を広く公開し,また広く見積情報を受け付け,それらを比較検討することにより最適な調達を行うためのシステムである。過去の実績や,クレーム情報なども記録し参照できる。また地元企業を育成するため,地元企業にはメールやFAXで調達情報を配信する。現在最終段階の運用テスト中だが,他のベンダーの見積もりに比べ構築コストは5分1だった。また運用コストは,実際に稼働してみなければ分からない部分もあるが,他ベンダーの見積もりに比べ4分の1となる見込みだ。

既存のベンダーの提案も変わってきた

 オープンソースによるシステムが実現したことで,既存のベンダーの提案も変わってきたと高木氏は語る。オープンソースの提案は少ないが,ASP(Application Service Provider)の活用などによりコストを抑えた提案が増えたという。

 「今回の2システムは最初の一歩」(高木氏)。今後は地元企業だけでLAMPのシステム構築ができるように企業育成も行いたいとしている。