図1 コアとアクセスの光技術の進展 コア技術は80年代初めに実用化がスタート。現在では1Tビット/秒の伝送容量を持つシステムも登場した。アクセス技術は80年代後半に始まり,コアに続く形で高速・大容量化が進んでいる。
図1 コアとアクセスの光技術の進展 コア技術は80年代初めに実用化がスタート。現在では1Tビット/秒の伝送容量を持つシステムも登場した。アクセス技術は80年代後半に始まり,コアに続く形で高速・大容量化が進んでいる。
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写真1 初期のコア・ネットワーク向け大容量光通信装置 83年に登場した,シングルモード光ファイバを用いたF400M多重端局装置。伝送容量は400Mビット/秒。
写真1 初期のコア・ネットワーク向け大容量光通信装置 83年に登場した,シングルモード光ファイバを用いたF400M多重端局装置。伝送容量は400Mビット/秒。
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写真2 家庭にも光通信技術が浸透 東西NTTが2001年に開始したFTTHサービス「Bフレッツ」。写真下は敷設工事の様子。写真右は光ファイバや家庭に引き込むONU(optical network unit)。
写真2 家庭にも光通信技術が浸透 東西NTTが2001年に開始したFTTHサービス「Bフレッツ」。写真下は敷設工事の様子。写真右は光ファイバや家庭に引き込むONU(optical network unit)。
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萩本 和男 NTT未来ねっと研究所 フォトニックトランスポートネットワーク研究部長
奥村 康行 NTTアクセスサービスシステム研究所 第一推進プロジェクト プロジェクトマネージャー
福徳 光師 NTT未来ねっと研究所 フォトニックトランスポートネットワーク研究部 フォトニックネットワーキング研究グループ 主任研究員

光通信技術は80年代初めにコア・ネットワークにおいて実用化されました。80年代後半からはアクセス・ネットワークにも光通信技術が応用され,今では家庭にも浸透しています。今回は,光ネットワークの発展の歴史と今後の方向性について紹介します。

 光通信技術の開発の歴史は,1970年代にさかのぼります。光の伝送損失が少ない光ファイバと,高速変調可能で小型の半導体レーザーの登場は,システム実用化の大きな一歩となりました。

 80年代に入り,光技術が長距離,大容量を目指す中,コア・ネットワークの分野で実用化がスタートします(図1)。81年に日本電信電話公社(現NTT)が,伝送距離2km程度のGI(graded index)マルチモード光ファイバを用いて,世界で初めて市外電話の中継システムを導入しました。その後,より長距離通信が可能なシングルモード光ファイバと1.3μm帯の波長を利用するコア・ネットワーク用の通信システムが登場。83年には伝送容量が400Mビット/秒(写真1),1.6Gビット/秒の光通信システムも実用化されました。84年には日本を縦貫する光ファイバ・ネットワークが完成。本格的な光通信時代に突入します。

 光ファイバ,半導体レーザーは改良が重ねられ,さらに長距離通信に向いた分散シフト光ファイバも登場しました。光ファイバ1本当たりの伝送容量は年2倍ものペースで増加し,現在では1Tビット/秒の容量に達しています。

 80年代後半には,光信号をそのまま増幅できる光増幅器が実用化されました。光信号を長距離伝送する場合,光の減衰を補うために,信号を増幅する仕組みが必要です。以前はいったん電気信号に変換してから増幅し,再び光信号に戻して中継していました。今では光の中継技術のみで太平洋の横断も可能になっています。

光アクセスは80年代後半にスタート

 光を使ったアクセス・ネットワークは,80年代後半にスタートします。コア・ネットワークで確立した技術を,法人向けの専用線サービスに応用したのが最初でした。当初は光ファイバや装置を占有するSS(single star)方式でしたが,その後,価格を下げるために局側の設備を複数ユーザーで共有するPDS(passive double star)方式の光アクセス・サービスが登場しました。

 一般消費者向けのFTTHは,97年にNTTが世界で初めて試験サービスを開始。以後も最大100Mビット/秒を共用する光インターネット・サービス「Bフレッツ」など次々と光アクセス・サービスを提供します(写真2)。2004年にはギガビット・イーサネットを応用したGE-PONを使う,最大1Gビット/秒のサービスも始まりました。

より使いやすい技術の追求へ

 日本における光通信の発展は,ブロードバンドのネットワークを支えるとともに,通信料金の低廉化に少なからず寄与しています。事実,電話料金では20年前の10分の1に,インターネット接続料金は世界中で最も安価に利用できるようになりました。

 コアから始まった光通信技術ですが,今後FTTHなどの光アクセス・サービスがけん引し,技術の発展する方向も変化していくことが考えられます。大容量化はコアのみならずアクセスでも進行中です。家庭内で光通信技術をさらに浸透させるために,光ネットワークをより使いやすくする技術も求められています。曲げに強い光ファイバであるホーリー・ファイバなどはその一例でしょう。

 次回は光アクセス方式の最新技術「GE-PON」を紹介します。