図 省令改正で変わったIEEE802.11a用のチャネル構成
図 省令改正で変わったIEEE802.11a用のチャネル構成
[画像のクリックで拡大表示]

 無線LANでは規格によって使う周波数帯が決められている。IEEE802.11aは5GHz帯,11bと11gは2.4GHz帯だ。このうち,2005年5月の総務省令改正で,11aが使う5GHz帯のチャネル構成が変わった。W53とは,新しく日本国内で利用できるようになったIEEE802.11a向けのチャネルのうち,5.3GHz帯のチャネルを指す。

 日本国内では従来,IEEE802.11aで使えるチャネルは四つあった。中心周波数が5170MHzの34チャネル,5190MHzの38チャネル,5210MHzの42チャネル,5230MHzの46チャネルである。これらのチャネルを通称「J52」と呼ぶ(図)。周波数帯域が5.2GHz帯であるのに加え,これらのチャネルが日本固有の割り当てになっていたためである。

 2005年5月の総務省令改正では,この日本固有のチャネル割り当てを国際標準に沿うように変更した。5.2GHz帯の四つのチャネルは,中心周波数を10MHz高いチャネルにずらし,36チャネル,40チャネル,44チャネル,48チャネルとした。これらのチャネルを「W52」と呼ぶ。さらに,これまで11aでは利用できなかった5.3GHz帯にも,52チャネル,56チャネル,60チャネル,64チャネルの四つのチャネルを新設した。これらのチャネルが「W53」である(図)。

 ただ,W53は地域気象観測システム「アメダス」の気象レーダーで使う電波の帯域と重なる。そのため,W53に対応するアクセス・ポイントは,気象レーダーと電波干渉を起こさないしくみを備える。具体的には,電源を入れて1分間は電波を出さず,自分の使うチャネルがレーダーとぶつかっていないか調べる機能を持つのである。レーダーの電波を検出すれば別チャネルに移動し,検出しなければ通信を始める。通信中にレーダーの電波を見つけたら通信を中断してチャネルを変える。

 レーダーが使う電波の帯域は地域で決まっているので,一度移れば電源を入れ直さない限りぶつからない。ただし,レーダーの電波が二つのチャネルにまたがる場合がある。このとき,元のチャネルと移動した先のチャネルが,ちょうどレーダーの電波と重なるケースもありえる。こうなると,再度チャネルを変更するために通信が中断してしまう。また,W53は,アクセス・ポイントを利用せずに端末同士が直接無線LANで通信する「アドホック・モード」では使えないようになっている。これも,気象レーダーとの干渉を抑えるためである。