●試験は無響室を使って実施
●試験は無響室を使って実施
[画像のクリックで拡大表示]
●今回測定した機種
●今回測定した機種
[画像のクリックで拡大表示]
●測定結果
●測定結果
[画像のクリックで拡大表示]
●Super π後に最も静かだったのはこの機種
●Super π後に最も静かだったのはこの機種
[画像のクリックで拡大表示]

 にぎやかな量販店の店頭ではパソコンが発する音はなかなか分からない。でも購入したパソコンを自宅で動作させてみると、「このパソコン、こんなにうるさかった?」という経験を持つユーザーも多いはず。

 そこで今回はNECとソニー、富士通の主力パソコンを対象に、大きめのきょう体を採用してPentium Dを搭載する「高性能デスクトップ」、20インチ前後のディスプレイを内蔵する「ディスプレイ一体型」、幅10cmほどの小さめなきょう体を持つ「省スペース型デスクトップ」、「ノート」の4つに分類し、それぞれについて発生する音の大きさを測定してみた。

音は3要素から構成

 今回の実験は東京都立産業技術研究所の無響室を利用した。測定は下図にある方法で行った。パソコンから発生する騒音の主な原因は、電源やCPUファンの回転音になるが、今回は個別の部材ごとの音ではなく、パソコン全体の音をユーザーに近い位置で測定することにした。具体的には、パソコン本体正面から50cm離れた位置で、1分間に発生した騒音エネルギーの平均値(騒音レベル)を測定した。下図の「測定方法」に記載している「暗騒音」とは無響室内で何も行っていない時点で測定される騒音を指す。なお、実際にパソコンを使っている環境では、床や壁などからの反射音や住居の材質などの影響もある。今回の結果はあくまで参考値と考えてもらいたい。

 人間は音を「音の大きさ」「音の高さ」「音色」の3つの要素で認識している。音の大きさは音波が持っているエネルギーで決まり、音の高さも音波の周波数で物理的に決まる。音色は定量的に計測はできず、音に含まれる周波数の成分や時間的な変化によって決まる。音色は人間の心理的な影響を大きく受けることも多く、人によって「心地よい音」や「不快な音」が異なる理由にもなっている。

 今回のテストは音の大きさを測定したもので、音の高さや音色については考慮していない点にも注意してほしい。

大きなファンがポイント

 今回のテストでは各機種に対して、(1)Windowsを起動した直後、(2)CPUに10分間負荷をかけた直後、の2種類の状態での騒音を測定した。CPUに負荷をかけるためには、円周率を計算する「Super π」というソフトを使った。

 結果は右のグラフの通り。CPUに負荷をかけた状態の結果を見ると、デスクトップでもっとも静かだったのは、ソニーの高性能デスクトップ「VAIO type R VGC-RC50L7」で26dB(デシベル)だった。1dBではあるが、NECの水冷パソコン「VALUESTAR X PC-VX700DD」よりも静かなのだ。VAIO type R VGC-RC50L7は、本体の側面に空気を取り入れる「エアインテーク」を設けて、CPUなどの部品を冷やすために直径12cmの大型ファンを低速で回転させているのが特徴。ファンの直径を大きくすると同じ送風量を確保するために必要な回転数が小さくなり、騒音レベルを抑えられる。さらに周波数も下がるので、人間の耳には感じにくい音になる。

 「VALUESTAR X PC-VX700DD」は、Super π動作後に上昇した騒音レベルはデスクトップでは最小の1dB。冷却機構にまだ余裕があることが分かる。動画のエンコードなどさらに負荷を強めれば逆転する可能性もありそうだ。この機種はCPUが発生する熱を、冷却液を使ってラジエーターに送り、大型ファンでそれを冷却している。高性能なデスクトップパソコンは騒音も大きいように考えがちだが、騒音対策をしっかりすればかなり静かにできるのだ。

 騒音レベルが35dB以上と、ちょっとうるさかったのは、富士通の高性能デスクトップ「FMV-DESKPOWER FMVH70M9V」とNECの省スペース型デスクトップ「VALUESTAR L PC-VL570DD」、およびソニーの省スペース型デスクトップ「VAIO type H VGC-H51B7」の3製品。こうしたきょう体の幅が比較的狭いパソコンではファンの直径が小さくなってしまう。このため高負荷時には、排熱のためにファンを高速回転させる(すなわち騒音が大きくなる)。ただし、富士通の「FMV-DESKPOWER FMVCE60M9」は省スペース型デスクトップでありながら、負荷時の騒音は28dBと小さかった。この機種はCPUにAMDのSempron 3400+を採用しており、他のCeleron Dを採用した製品と比べ、動作周波数が800MHz以上低かったためと思われる。

 ディスプレイ一体型は高性能デスクトップと同様にきょう体が比較的大きいことや、AV用途に使われることを想定して騒音対策を行っている成果が出ているといえそうだ。前面に大型のディスプレイがあることも、本体前面から50cmの位置で計測する今回の方法では有利に働いた可能性がある。

起動直後はどれも静か

 30dBはささやき声、40dBは図書館の音の大きさとされるが、パソコンが発生する音は人間が快適に感じる音色とはいえないため、数値以上にうるさく感じる。

 記者の個人的な感覚では起動直後であれば、どの機種もかなり静か。負荷をかけた後では30dBを超える機種はファンが回っていることがはっきり分かり、35dBを超えるとうるさく感じた。またソニーのディスプレイ一体型「VAIO type V VGC-VA200B」はファンの回転数の変動が大きめで、32dBという数値の割にうるさく感じられた。

 またノートパソコンは測定値は小さかったものの、ユーザーの目の前に本体を置くことや、小さなファンを高速で回転させるため、実際の数値以上に音が大きく感じられることがあった。

騒音の測定方法

 騒音レベルの測定は東京都立産業技術研究所(http://www.iri.metro.tokyo.jp/)の無響室で行った。無響室の内装はグラスウールで覆われており、室内で発生した音の反射を防ぎ、測定対象が発生する音を正確に測定できる(左)。また測定時の暗騒音は12dBとなっている。なおノートの値は暗騒音に近いため、本来なら補正を行うべきだが、今回は補正を行わず計測値をそのまま掲載している。今回の測定では振動の影響をなくすため、防震ゴムを敷いた台上にパソコンを設置した。実際の利用状況に合わせて、本体の正面中央から50cm離れた位置で、JIS C1505(精密騒音計)を使って計測を行った(右)。騒音レベルは1分間の平均値を求めている。