CCNAを取得するにはルータの操作が必要になります。でも,操作法を覚える前に,ルータとはどんな機器なのか,どのような方法で操作をするのかを知ることから始めましょう。そして,IOSとはいったい何なのか,という点も説明します。 なお,用字用語の表記はシスコシステムズの流儀に合わせるようにします。このため,IT Proのほかの記事とはちょっと表記が違っています。例えば,シスコ流では「ルーター」ではなく「ルータ」,「コンソール・ポート」ではなく「コンソールポート」といった具合です。

ルータはコンピュータの一種だ

 インターネットワーキングの中核的な機器であるルータは,「独立して動作する中継用コンピュータ」とも言える機器です。この点は,機械的に信号やフレームをやりとりする,スイッチングハブ(レイヤ2スイッチ,LANスイッチ)やリピータハブのような機器と大きく異なる部分です。通常,コンピュータには5大装置と呼ばれる,制御・演算(CPU),入力・出力(キーボード・モニタ),記憶(メモリ・HDD)の5つの装置がありますが,ルータにも同様の装置が組み込まれています。シスコルータでは以下の装置が組み込まれています。

  • CPU
  • RAM ・・・ ルーティングテーブル,ARPテーブル,入出力バッファなど
  • ROM ・・・ POST(起動時診断プログラム),ブートローダなど
  • NVRAM(不揮発性RAM) ・・・ 設定ファイル
  • フラッシュメモリ ・・・ OS
  • インタフェース ・・・ コンソール,イーサネット,シリアルなど

 このように,制御・演算(CPU),入力・出力(インタフェース),記憶(RAM,ROM,NVRAM,フラッシュメモリ)とコンピュータの5大装置がそろっています。なので,「中継装置」というよりは「中継コンピュータ」なのです。

 コンピュータは,ただ5大装置があるだけでは動作しません。それを動かすソフトウエア,つまりオペレーティングシステム(OS)が必要です。もちろんルータにもOSが存在します。シスコルータではInternetwork Operating System,通称IOSと呼ばれます。

IOSとは

 シスコルータを動かすOSであるIOSは,パソコンの標準的なOSであるWindowsなどと違い,グラフィカルなアイコンなどを使用するGUI(Graphical User Interface)ではありません。1行ずつコマンドを入力していくUNIXやMS-DOS同様,CLI(Command Line Interface)と呼ばれるタイプのOSです。すべてを文字情報のみで扱い,キーボードからコマンドを入力して操作していきます(図1)。

 図1 IOSの画面
IOS画面

 CLIはコマンドを知らなければ,まったく操作できません。GUIのように何となくアイコンをクリックするというわけにはいかないのです。このため,シスコルータを扱うにはIOSのコマンドを覚えていく必要があります。

シスコルータとの接続方法(コンソールとVTY)

 コンピュータを操作するためには,キーボードとモニタが必要ですが,ルータにはそれが付いていません。ルータが持つ入出力装置は基本的にパケットをやりとりするためだけのものです。このため,ほかの端末からルータに接続し,そこからコマンドを入力し,結果をモニタに表示させる必要があります。この接続方法には大きく分けて2種類 + 1種類あります。

  • コンソール接続
  • 仮想端末(VTY)接続
  • TFTP

 まずコンソール接続ですが,これはルータのコンソールポート(図2)と端末のCOMポートを専用のケーブル(ロールオーバケーブル)で接続する方法です。ルータの初期設定が行われるまではこの方法でしか接続できません。このコンソール接続は物理的にルータの近くでしか実施できませんが,直接ケーブルで接続しますので,途中で盗聴される危険性はなく,セキュリティ的には高い方法だと考えられます。

 図2 Cisco1601コンソールポート
Cisco1601コンソールポート

 仮想端末(VTY)接続は,ルータの初期設定後に使用できる接続方式です。リモートログインのプロトコルであるTELNETを使用し,物理的に離れた場所からもルータに接続(ログイン)できます(図3)。イメージ的にはTELNETを使って仮想的なコンソールポート(VTYポート)に接続している形になります。ただし,途中で盗聴される危険性をはらんでいます。シスコルータは仮想的なポートを5つ(0~4番)持っていますので,同時に5台の端末がログインできることになります。

 最後のTFTPは,TCP/IPプロトコルの簡易FTPのことです。TFTPで接続したのち,コマンドを入力して操作するという形で使うわけではありません。シスコルータではTFTPを使ってOSや設定ファイルをアップロード/ダウンロードすることができます。これによりOSのアップ/ダウングレードや,設定のバックアップ/復旧を行うことができます。

 図3 ルータへの外部からの接続
ルータへの外部からの接続