図1●MOM 2005 Workgroup Editionが動作する仕組み<BR>管理対象サーバーごとにインストールしたエージェントが情報を収集し,障害などが発生したらMOMサーバーに送信する。MOMサーバーは各エージェントから受け取った情報をデータベースに格納する。
図1●MOM 2005 Workgroup Editionが動作する仕組み<BR>管理対象サーバーごとにインストールしたエージェントが情報を収集し,障害などが発生したらMOMサーバーに送信する。MOMサーバーは各エージェントから受け取った情報をデータベースに格納する。
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図2●オペレータ・コンソールのアラート表示画面&lt;BR&gt;表示されたアラートの一つを選択すると,画面下部により詳しい情報や関連するイベント,典型的な解決手順などが表示される。
図2●オペレータ・コンソールのアラート表示画面<BR>表示されたアラートの一つを選択すると,画面下部により詳しい情報や関連するイベント,典型的な解決手順などが表示される。
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図3●リモート・サーバーに対してタスクを実行したところ&lt;BR&gt;画面右上の[タスク]の各項目をクリックすることで,pingコマンドを実行したり[コンピュータの管理]アプレットを操作したりできる。管理パックが用意するタスクを利用すれば製品/サービス固有の処理も実行可能。
図3●リモート・サーバーに対してタスクを実行したところ<BR>画面右上の[タスク]の各項目をクリックすることで,pingコマンドを実行したり[コンピュータの管理]アプレットを操作したりできる。管理パックが用意するタスクを利用すれば製品/サービス固有の処理も実行可能。
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表1●MOM 2005 Workgroup Editionに標準で付属する管理パックと,サード・パーティが配布中もしくは今後配布予定の主な管理パック
表1●MOM 2005 Workgroup Editionに標準で付属する管理パックと,サード・パーティが配布中もしくは今後配布予定の主な管理パック
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図4●イベント・ルールを作成するウィザードの画面&lt;BR&gt;IISでアプリケーション・プールのジョブの個数が一定値を超えたときにイベントとして通知するように設定している。ここではイベントの発生元とイベントIDだけで判別しているが,イベントの説明やテキスト形式のログが,正規表現で指定した文字列を含むかどうかなどで判別することもできる。
図4●イベント・ルールを作成するウィザードの画面<BR>IISでアプリケーション・プールのジョブの個数が一定値を超えたときにイベントとして通知するように設定している。ここではイベントの発生元とイベントIDだけで判別しているが,イベントの説明やテキスト形式のログが,正規表現で指定した文字列を含むかどうかなどで判別することもできる。
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▼運用管理ソフトMicrosoft Operations Manager(MOM) 2005 Workgroup Editionが11月にサーバーへのバンドルの形でハード・ベンダー各社から出荷される見込みである。
▼Workgroup Editionでは,小規模な環境向けに不要な機能を省き,2004年12月に出荷開始したMOM 2005通常版に対して最大で9割引以上と,大幅に低価格化する。

 Microsoft Operations Manager(MOM) 2005は,マイクロソフトが2004年12月に出荷開始した運用管理ソフトである。ネットワーク上にあるWindows NT 4.0(SP6a)/2000/XP/Server 2003マシンと,その上で動くExchange Server,SQL Serverなどのサーバー・ソフトが正常に稼働しているかどうかを集中的に監視し,障害発生時に管理者にメールなどで通知したり,あらかじめ指定した処理を自動的に実行したりする機能を備える。例えば,(1)ファイル・サーバーが過負荷状態になったときに管理者の注意を促す,(2)IIS(Internet Information Services)がダウンしたときに自動的に再起動する——といったことができる。

 2005年11月に出荷されるMOM 2005 Workgroup Editionは,このMOM 2005(以下通常版)を小規模な環境向けに不要な機能を省いて低価格にした製品である。具体的には,管理できるサーバーの台数を10台以下に制限し,MOM管理サーバーの冗長構成,レポート出力,コネクタによる他社製運用管理ツールとの連携——などの機能を省略した。通常版と違ってマイクロソフトは単体販売せず,ハードウエア・ベンダー各社がサーバー製品にバンドルして出荷する。

 同製品の目玉は,何といっても価格である。MOM 2005通常版の場合,運用する際にはMOM本体のライセンスに加え,収集したデータを蓄積するためのSQL Serverのライセンスと,管理するサーバー1台ごとに運用管理ライセンス(OML)が必要になる。これらのOpen Businessライセンス*による推定小売価格(税抜き)は,MOMサーバー・ライセンスとSQL ServerのMOM専用ライセンスのセットが28万9000円,OMLが9万4200円。仮に10台のサーバーを管理するなら,28万9000円+9万4200円×10=123万1000円になる。

 対して,Workgroup Editionの米国での単体販売価格は499ドル。日本での価格はハードウエア・ベンダー次第だが,日本語化などのコストを上乗せしても10万円程度で済むと見られる。Workgroup EditionではOMLが不要で,データベース管理システムもSQL Serverの代わりにマイクロソフトが無償配布するMSDE(SQL Server 2000 Desktop Engine)を使用できる。サーバーが10台の環境では,9割引以上にもなる計算だ。

様々な管理作業をリモートで実行

 MOM 2005 Workgroup Editionは,(1)管理対象となる各サーバーにインストールして情報を収集する「エージェント」,(2)エージェントが集めた情報を集中管理する「MOMサーバー」,(3)サーバーの稼働状況をリアルタイムに監視できる「オペレータ・コンソール」,(4)Webブラウザ上で監視可能な「Webコンソール」——などで構成される(図1[拡大表示])。

 エージェントは,サーバーのイベント・ログ*パフォーマンス・カウンタ*などから情報を収集し,あらかじめ指定した条件(ルールと呼ぶ)に合致するとMOMサーバーに通知する。例えば,「NTFSディスク・クォータのしきい値の制限に達した」「WWWサービスがメモリー不足などのエラーで終了した」「Exchange Serverでクライアントの認証に失敗した」といった場合である。エージェントは,こうした情報を,(1)一般的な情報を表す「イベント」,(2)管理者への警告を表す「アラート」,(3)処理性能に関する情報を表す「パフォーマンス」——の3種類に分けて通知する。MOMサーバーは,各管理対象サーバーから収集したこれらの情報を集約してデータベースに記録する。

 各エージェントは,MOMの管理コンソールで管理対象のサーバー名を指定するだけでリモート・インストールできる。エージェントのアップデートなども,リモートで実行できる。収集できる情報などが限られるものの,MOMは各サーバーにエージェントをインストールせず,MOMサーバーが直接サーバーを監視する仕組みも用意している。

 障害発生時には,オペレータ・コンソールのアラート画面で該当するアラートをクリックすると,画面下部にアラートの詳細な情報や関連するイベントなどが表示される(図2[拡大表示])。イベントに関する詳しい情報は,イベント画面に切り替えると表示される。障害の原因が複数のサーバーやソフトにわたるような場合には,それらをグラフィカルに表示するダイアグラム画面も利用できる。さらに,オペレータ・コンソール上で対象となるサーバーに対してipconfigコマンドや[コンピュータの管理]アプレット,そのほかあらかじめ定義したコマンド/スクリプトなどをリモート実行することも可能だ(図3[拡大表示])。

 このほか,イベントやアラートに対してドキュメントを関連付ける機能を備えており,社内のナレッジベースの構築に利用できる。マイクロソフト自身が問題解決の手順などをまとめたナレッジベースも付属する。現在のステータスを入力して追跡する機能も用意しているので,トラブル解決の進ちょく管理にも使える。

管理パックでUNIXも監視できる

 運用管理ソフトを効果的に使用するために最も重要なのは,イベントやアラートを発生させる条件を適切に設定することだ。ただ,こうしたルールを自分で定義するには,ある程度の経験と試行錯誤が必要になる。そこで,MOMはあらかじめ有用なイベント/アラート・ルール,スクリプト,ナレッジベースなどを管理対象製品ごとにまとめた「管理パック」という仕組みを用意している。

 MOM 2005 Workgroup Editionには,SQL ServerやExchange Serverといった様々なマイクロソフトのサーバー製品用の管理パックが標準で付属する(表1[拡大表示])。例えばExchange Server用の管理パックでは,「使用可能なメモリー/ディスクが不足しているためにメッセージの処理に失敗した」「ユーザー情報を得るためにActive Directoryを参照しようとしてエラーが発生した」「クライアントが最大ログオン試行回数を超えて接続を試みた」など,1000種類以上のイベント・ルールが定義されている。こうした管理パックを利用することで,MOMをインストールするだけですぐに効果的な運用ができるようになる。MOMは該当するソフト/サービスを検出した時点で管理対象サーバーに管理パックをインストールするため,配布の手間もかからない。

 自分でルールを定義する際には,付属するウィザードを利用できる。各管理対象サーバーにインストールされたエージェントは,イベント・ログやパフォーマンス・カウンタのほか,WMI(Windows Management Instrumentation)イベント,IISログ,そのほかアプリケーション独自のテキスト・ログなどの様々なデータから情報を取得する機能を備える。これらの情報に対して,「イベントIDが指定した値と一致する」「パフォーマンス・カウンタのある項目がしきい値を超えた」といった条件を設定していけばよい(図4[拡大表示])。定義したルールを管理パックの形にまとめるためのウィザードも用意する。

 このほか,サード・パーティ各社も自社のハードウエア/ソフトウエアを管理するための管理パックを提供している(表1下)。例えばデルが無償で配布するDell Management Packをインストールすれば,ケース内の温度や電源ファンの回転数がしきい値に達したときや,ケースが開けられたときなどに警告を発するように設定できる。

 MOM日本語版は出荷されてから日が浅いため,国内で提供されている管理パックの数はまだ少ない。ただ,こうした状況は現在徐々に解消されつつある。シトリックス・システムズ・ジャパンは,同社のターミナル・サービス拡張ソフト「Presentation Server 4.0」にMOM 2000用の英語版管理パック(MOM 2005日本語版でも動作)を付属するほか,2005年中にMOM 2005の新機能に対応した日本語版管理パックを出す予定だ。オービックビジネスコンサルタントも,同社の会計ソフト「奉行シリーズ」の後継製品(2006年に出荷予定)に,管理パックを用意する計画である。

 NRIデータサービスは,同社の運用管理ソフト「eXsenju」とMOMを連携させるための管理パックを2005年内に無償で提供する。これにより,eXsenjuが収集するUNIXマシンなどの情報もMOMで管理できるようになる。同社はさらに,MOMで管理することを前提としたeXsenjuの低価格版も年内に出荷する予定だ。

 ちなみに,MOMの最初のバージョンが出てから4年以上になる米国では,サード・パーティから100種類以上もの管理パックが出荷されている。管理パックの開発を専門とするベンダーも育っており,管理対象となるソフトも,米Oracleのデータベース管理システム,Linux,Solaris,AIX,HP-UXなどのUNIX OS,米Cisco Systemsのルーターなど多岐にわたる。今後,こうした管理パックが日本語化されて販売されることを期待したい。