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「デジタルカメラに強くて長持ち!」——大手量販店のデジカメコーナーの横には、こんな文句をうたった乾電池がずらりと並ぶ。昨年4月に松下電池工業が「オキシライド乾電池」、日立マクセルが「イプシアルファ」といった新しい乾電池を投入して以来、デジカメに強いことを売りにした電池が売り場での勢力を伸ばしている。そこで今回はいま店頭にある乾電池の中で、一体どの電池が一番長持ちするのか、最もお得な電池はどれなのかを、撮影テストで検証してみた。

お得度No.1はリチウム電池

 まずは表を見てほしい。ここでは市販されている7種類の乾電池を集めて、電池が切れるまで何枚撮影できるかを比較した。各電池は材質により「アルカリ」「ニッケル」「リチウム」の3つに分かれる。

 結果を見ると、リチウム乾電池が520枚と圧倒的な撮影枚数を誇った。単価は550円と高額だが、1枚当たりの費用は1.1円と7種類の中で飛び抜けた安さだ。できるだけ多く撮影したいなら、文句なくお薦めだ。

 最も普及しているアルカリ乾電池では、イプシアルファが110枚と唯一100枚を超えた。ただ、価格が高いため、1枚撮影するのにかかるコストは2.8円と7種類の中で最高値となった。同じ日立マクセルの「ダイナミック」は、撮影枚数こそ85枚と最少だが、単価が安いため価格性能比は2.4円とアルカリで1番だった。

 ニッケル乾電池は、3種類ともアルカリより2倍近く撮影できた。オキシライドは、同じ松下電池工業のアルカリ乾電池より、デジカメで約2倍の長持ちを実現すると説明している。実際、測定値は93枚と181枚でほぼ2倍の性能を示した。価格性能比もアルカリを上回る結果となっている。東芝電池がデジカメに強い電池として、オキシライドよりも2年ほど早く発売した「GigaEnergy」は、撮影枚数が206枚で価格性能比が1.5円。ともに全体で2番目の記録だった。

携帯音楽プレーヤーでは逆転!?

 デジカメに強いことを証明したニッケル乾電池とリチウム乾電池。では、デジカメ以外の機器でも同じように優位を保てるのか。今度は携帯音楽プレーヤーの連続再生時間を比較してみた。

 下の表(実験?)の結果では、リチウムの連続再生時間が13.2時間、ニッケルが9時間、アルカリが8.1時間とデジカメの撮影枚数と同じ順番になった。ただし1時間当たりの価格性能比を見ると、安い順にアルカリが15.5円、ニッケルが17.4円、リチウムが20.9円と見事に逆転した。

 使用する機器によって価格性能比に差が出たのはなぜか。ここで下の2つの概念図に注目。これはデジカメのように消費電力の多い機器と、携帯音楽プレーヤーのように消費電力が少ない機器とで、各電池の電圧が使用時間に応じてどのように変化するかを表したグラフだ。

 基本的にどの電池も時間が経つと電圧は下がる。注目したいのは、ある一定の電圧を切ると機器自体が動かなくなることだ。このときの電圧をカット電圧(終止電圧)と呼ぶ。通常の機器なら0.9Vまでは動作可能だが、デジカメの場合は1~1.05Vを切るとそれ以上は撮影ができなくなる。デジカメでは、高い電圧をより長く維持することが長持ちの秘訣なのだ。

 オキシライドなどのニッケル乾電池は、初期電圧が約1.7Vとほかの電池より高く、アルカリに比べて電圧の下がり具合が緩やかなため、より長く撮影することができる。一方、携帯音楽プレーヤーなど、それほど多い消費電力を要求しない機器の場合は、アルカリも電圧を維持しやすくなるうえ、カット電圧の値が低いため、デジカメの時ほど差が出なくなる。そのため単価が安いアルカリのほうが、価格性能比で逆転したというわけだ。

用途に合わせて購入しよう

 実験を通じて分かったことは、どの電池も同じだと思ってやみくもに使用していると、知らずに損をしてしまうということだ。例えば防災用の懐中電灯に使うのならアルカリで十分。性能を保ったまま保管できる「保護期間」も、ニッケル乾電池が2年なのに対してアルカリは5年と長い。ほかにも、リチウム電池は寒い場所でも性能が落ちないため、スキー場などで利用するには最適というように、各電池で特徴がある。また、今回は実験対象から外したが、頻繁に使うなら「充電池」という選択肢もある。たかが電池、されど電池。せっかく買うなら、用途に合わせて賢く購入しよう。