複数のユーザーでファイルを共有するファイル・サーバーは多くのユーザーが利用している。ただ,いざ導入しようとすると,インストールや設定に手間取ることもある。そんなときに便利なのが,ネットワークにつなげばすぐにファイル・サーバーとして利用できるNASと呼ばれる製品だ。安いものは2万円台から手に入る。

図1 NAS(network attached storage)はネットワークに接続するだけでファイル・サーバーとして使えるストレージ製品である
図2 NASは搭載するディスクの数や価格によってハードディスク型とサーバー型の二つに大別される
 NAS(ナス:network attached storage)はネットワーク上で使う,ファイル・サーバー専用のアプライアンス製品である(図1[拡大表示])。CPUやハードディスク,LANインタフェース,ファイル共有を実現するためのソフトなど,ファイル・サーバーに必要なものすべてを,一つのきょう体にまとめて提供している。そのため,そのままネットワークに接続すれば,簡単にWindowsやMacintosh,UNIX,Linuxといった幅広いマシンから共通にファイル・サーバーとして利用できる。

簡単に安くファイル共有を実現

 NASのメリットは管理・運用が簡単で,なおかつ価格が安いことである。

 通常のパソコンやPCサーバーをファイル・サーバーにしようとすると,まずOSのインストール作業から始めなければいけない。その上で,ネットワーク上で共有するディレクトリの設定などをする。複数のOSから利用できるようにしたければ,それぞれのファイル共有プロトコルを扱うためのソフトを追加でインストールする手間も必要となる。

 NASを使えば,このような面倒な手順は必要ない。基本的な設定は終了しているため,箱を開けてネットワークに接続すれば,あとは最低限の設定だけで,すぐにファイル・サーバーとして利用できる。もちろん,きちんと動作することがあらかじめ確認された状態で出荷されているため,インストールや設定の途中でうまく動かないといったトラブルに巻き込まれることもない。

 NASは導入にかかる費用も安い。最も安いもので2万円台と,ハードディスク装置とほとんど変わらない値段から購入できる。利用するユーザー数もライセンス上での制限はないため,処理能力が許す限り何ユーザーでも追加費用なしで利用してかまわない。パソコンやPCサーバーをファイル・サーバーとして使った場合には,ユーザーごとのライセンスが必要となったり,そもそも一定ユーザー数以上の利用を認めていないこともある。

 もちろんNASはファイル・サーバーにしか利用できず,グループウエアやデータベースなどのプラットフォームにはできない。しかし,単機能のファイル・サーバーの導入を考えているなら,NASは検討しておきたい。

製品は二つのタイプに分かれる

 実際のNAS製品は大きく二つのタイプに分かれる(図2[拡大表示])。

 まず,エントリ・モデルは,ハードディスクやLANインタフェース,基本的なソフトといったNASとして必要最小限の要素で構成した製品である。1台のディスクだけで構成するため,形状も通常の外付けハードディスク装置とほとんど変わらない。机の上の空いているスペースに簡単に置けるので使い勝手がよい。つまり,外付けハードディスク装置のインタフェースがUSBやSCSI(スカジー)からLANに代わった「ハードディスク型NAS」といえる製品群だ。

 もう一つのタイプは,複数のディスクを搭載して機器の拡張性や信頼性を強化したNASである。ディスクの数を増やすことで,より多くのデータを格納できるだけでなく,RAID(レイド)と呼ぶ手法を使うことで信頼性を高めている。RAIDを使えば,複数のディスクにデータが分散されるので,一つのディスクに障害が発生した場合でもデータを復旧できるようになる。

 こういった複数のハードディスクを搭載するNASは,当然ながら製品の形状も大きくなる。ボックス型やタワー型,ラック型といった,いわゆる一般的なPCサーバーに近い形になる。プロセッサもPentiumペンティアム 4(フォー)やXeon(ジーオン)といったPCサーバーでよく使われるCPUを採用しているものが多い。こうしたNAS製品は「サーバー型NAS」と呼べる。

 このサーバー型NASでも,通常のPCサーバーに比べて価格面でのメリットがある。これは,ファイル・サーバーに用途を絞って必要なものだけで構成しているからだ。ほとんどの場合で,CPUやハードディスク容量などを同じ構成にしたPCサーバーよりも安くなる。

 サーバー型NASの上位モデルになると,10台以上のディスクを搭載したり,SAN(サン)のゲートウエイとして動作して事実上無制限のデータ量を扱えたりするような製品が存在する。これらのハイエンドNASについては,別掲記事で改めて触れるが,今回は主に50万円以下の比較的低価格なNASにしぼって製品研究する。