写真1●なぜか「鐘」があしらわれた美しい花壇を前にしたOSCON会場
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写真2●びっしり埋まったセッションのスケジュール表
写真2●びっしり埋まったセッションのスケジュール表
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写真3●応対に追われるPostgreSQLブースの担当者。黄色いポロシャツを着ているのがコアメンバのBruce Momjian氏
写真3●応対に追われるPostgreSQLブースの担当者。黄色いポロシャツを着ているのがコアメンバのBruce Momjian氏
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写真4●Gibsonのブース
写真4●Gibsonのブース
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写真5●Powell's Bookstoreの出店
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写真6●美しい花で飾られたOSDL付近の街並
写真6●美しい花で飾られたOSDL付近の街並
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写真7●新しいコアメンバーDave Page氏(日本PostgreSQLユーザ会セミナーでの講演)
写真7●新しいコアメンバーDave Page氏(日本PostgreSQLユーザ会セミナーでの講演)
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図1●デッドロックの発生
図1●デッドロックの発生
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 いよいよ待望のPostgreSQL 8.1のベータ・テストが開始された。また,新たなコアメンバが追加されたなど,今回はお届けするニュースが豊富にあるが,とりあえず軽い話題から。

OSCON 2005報告

 8月にOpen Souce Convention 2005(OSCON 2005)に参加してきたので,簡単に報告する。

 OSCONは,コンピュータ関連の出版大手の米O'Reillyが毎年開催しているオープンソース関連のコンファレンスである。チュートリアルやセミナー(有償)の他,ブース展示もある(入場無料)。筆者今回8/3から8/5まで開催されたセミナーとブース展示を見学した。

 OSCON会場は,米国西海岸の静かな街オレゴン州ポートランドのコンベンションセンターに設定されていた。ポートランドはスローガンが「花の街」ということになっているらしく,あちこちに花を見掛ける美しい街である(写真1)

 筆者は以前別件でポートランドを訪れたことがあったが,折悪しく冬で,あまりよい記憶がなかった(雪が積もっていてすごく寒かった)。さすがに夏のオレゴンは美しくかつ気候も快適で,コンファレンス会場に選ばれた理由がわかるような気がした。

 考えていたよりも展示会場は広く,またセッションの数も多かった。特にセッションは常に同時に14, 15個も開催され,多くのセッションを回ろうとするとかなり忙しいことになる(写真2)

 名だたるオープンソース関連のコミュニティや企業がOSCON 2005に参加しているが,もちろん私の目当てはPostgreSQL関係のセミナーやブース展示だ。

 PostgreSQLコミュニティのブース割りとこじんまりしたものだったが,ひっきりなしに人が訪れ,ブースの担当者は対応におおわらわだったようだ(写真3)

 日本のコンファレンスと特に違うのは,リラックスした雰囲気だ。会場の中には休憩コーナがあり,スターバックスの珈琲が無料で提供されるなど,サービスもよい。また,なぜかGibsonのブースがあり,腕自慢のハッカーがギターをつま弾いていた(写真4)。こういった遊び心が面白い。

 OSCONの展示やセッションだけでは情報が足りない知識欲旺盛な参加者は,「世界で一番大きい」と言う地元の書店「Powell's Bookstore」のコーナーで書籍選びに余念がなかった(写真5)

 PostgreSQL関連のセッションでは,大規模事例に関するものが多かった。ほとんどの事例で,性能や可用性を高めるために,Slony-Iやpgpoolが使われていた。日本で人気の高いPGClusterの事例には残念ながらお目にかかれなかった。

・PostgreSQL Built Your Car

 Aaron Thul氏による大規模な車の製造データの管理システム事例である。GM,Ford,クライスラー,日産,三菱,ホンダで使われているそうだ。

 同時100ユーザーを受け付け,1日75Gバイトのデータ交換,221Gバイトのデータを処理しているとのこと。設計データはファイルシステムに保存され,メタデータをデータベースで管理している。

 従来AIX上のOracle 8とCによる CGIプログラムを組み合わせて使用していたものを,Debian上のPostgreSQL 7.4に移行した。Slony-Iでレプリケーションし,コネクションプールサーバーにpgpoolを使用している。アプリケーションはPerl(mod_perl)で書き直された。

 Aaron Thul氏によれば,新システムは旧システムよりも性能に優れ,ユーザーから好評とのことだ。

・Terabytes of Business Intelligence: Design and Administration of Very Large Data Warehouses on PostgreSQL

 コアメンバのJosh Berkus氏とPostgreSQL開発者のJoe Conway氏によるPostgreSQLによるデータウェアハウス構築の事例である。1日あたり合計300万人がアクセスするwebサイトのデータを分析するシステムで,データサイズは1 年分で520Gバイトとのことである。データの分析,前処理はETL(extract,transform and load)サーバー上のperlで行い,PostgreSQLに登録する。この処理は毎晩行われ,5時間を要する。可用性を高めるために2台のDBサーバーとpgpoolが使われており,DBサーバーの障害時には自動的にfail overが行われる。なぜSlony-Iでレプリケーションをしないのか,と聞いてみたところ,このような大規模データではSlony-Iでは性能的に問題があるのでpgpoolを使用しているということであった。

人気を集めるRuby

 私は聴講できなかったが,まつもとゆきひろ氏によるRubyの講演があった。Rubyは今米国で急速に人気を集めており,日本初のオープンソースソフトが米国で受け入れられているのは同じ日本人として感慨深いものがあった。

急遽OSDL訪問

 OSCONが終わったあと,ひょんなことからPostgreSQLのコアメンバらと共にOSDLを訪問することになった。OSDLはポートランドの郊外にあり,目の前に路面電車の駅があって,とても便利かつ静かな恵まれた環境にある(写真6)。案内役はベンチマーク・ソフトのDBT-3を開発されたMark Wong氏である。マシンルームにはしっかりした工作スペースがあり,ケーブルなどは自作しているようで,さすがなんでも自分で作ってしまうアメリカ人,と感心した。

 OSDLでは,マシンルームの見学の後,カーネル開発者とコアメンバの間で長時間に渡りデータベースのパフォーマンス問題がディスカッションされた。

新しいコアメンバ

 次の話題に移ろう。PostgreSQLのコアチームに新しいメンバが加わった。Dave Page氏(写真7)である。

 Dave Page氏は,Windows版PostgreSQLの開発,ODBCドライバの開発,pgAdmin の開発などでの実績を買われてコアメンバの抜擢となった(関連記事)。氏がJPUGの誘いで来日した際に一度お会いしたことがあるが,もの静かで非常に知性豊かな印象がある。氏はコミュニティのまとめ役としても定評があり,今後の活躍に期待したい。

 最後に,今回のビッグ・ニュースであるPostgreSQL 8.1のベータ・テスト開始について触れたい。