ルクセンブルグのスカイプ・テクノロジーズが、無料の通話ソフト「Skype」の法人導入をもくろみ日本で協業を呼びかけている。一部仕様の無償公開に加え、今夏には対応製品の認定制度を立ち上げた。社内利用を管理できるソフトに脱皮できれば、有力なIPソリューションに育つ可能性がある。



 PtoP(ピア・ツー・ピア)技術を使うSkypeが、日本のIP電話商談にくさびを打ち込むかもしれない。

 「拠点間は通話無料」というIP電話が普及している日本で、Skypeを「電話」として使う魅力は国際通話料を節約できるくらいしかない。しかし、ソリューションプロバイダから見れば事情は異なる。

 閉じたIP網で品質を確保するIP電話サービスは、通信事業者から回線とセットで調達する。企業内線の構築も、特定メーカーの製品を前提にした提案が必要だ。しかし、Skypeを使えばこれらのベンダーに依存しないIPソリューションを提案できるのだ。

 実は、通信事業者からもSkypeを取り込む動きが出てきた。IP電話事業者のフュージョン・コミュニケーションズはスカイプと提携し、「050」番号を持つIP電話とSkypeを連携させるサービスを開発している。狙いは「中小企業になかなか普及しないIP電話のてこ入れ」(平山義明第三営業部長)だ。

 秋にも始めるサービスは、050番号あての通話をフュージョンの網内でSkypeの端末に転送する仕組みなので、企業がフュージョンのIP電話に対応した回線を導入する必要はある(図)。ただし総務省の規制緩和次第では、回線に依存せずSkype利用者に番号を割り当てるサービスも視野に入れる。

メーカーのIP電話と共存の提案も

 ソフト開発会社からは、Skypeを手掛かりにIPソリューションに参入する動きも出てきた。IP電話と連携する“定番”のグループウエアは、ネオジャパンやサイボウズ、アリエル・ネットワークが対応製品を既に提供している(表)。

 さらに、営業支援ソフトのソフトブレーンやナレッジマネジメントのリアルコムなどが自社製品でSkypeとの連携機能を開発中だ。ソフトの顧客/社内名簿から、通話やチャット、ファイル転送機能を利用できるほか、履歴や通信内容を営業記録などの業務ソフトのデータに関連付ける機能を実装する。

 興味深いのは、受託開発のマイスターズ コーポレーション(東京都台東区)が開発を進める「Beltre」だ。Skypeでビジネスフォンの使い勝手を実現するソフトで、外線に反応して部内のSkype端末すべてのベルを鳴らし、発信者名も全端末に表示できる「代表着信」や、内線転送なども実現する。