来年の話で恐縮だが、2006年に登場するノートパソコンは性能の大幅な向上が期待できそうだ。インテルが2006年第1四半期に出荷を始める新CPU「Yonah」(ヨナ、開発コード名)は、同社のノート用CPUとしては初のデュアルコアCPUとなる。デュアルコアCPUとは計算回路(CPUコア)を2個内蔵したCPUのことで、すでにデスクトップ用では「Pentium D」の出荷が始まっている。しかし、Yonahは、Pentium Dより、デュアルコアCPUとしての“筋がよく”、より一層の性能向上が期待できそうなのだ。
Yonahの最大の特徴は、2つのCPUコアが1つの2次キャッシュ(2MB)を共有する構造になっていること(図1[拡大表示])。2次キャッシュを共有した方が、各コアが個別に2次キャッシュ(1MB)を備えているPentium Dよりも理屈の上で性能は高くなると考えられるのだ。
例えば、CPUコア1が使っているデータを、CPUコア2が使う場合、Pentium Dではそのデータをメモリーに書き戻して、CPUコア2がそれを自身の2次キャッシュに読み出して利用するという手順を踏む。Yonahでは2次キャッシュを共有しているので、CPUコア2がデータにアクセスするときにメモリーアクセスは発生しない(図2[拡大表示])。2次キャッシュへのアクセスに比べて、メモリーへのアクセスは時間がかかる。それを省略できる分、Yonahの性能は高くなるというわけだ。
共有キャッシュならば各コアが使うキャッシュも効率的に使える。Pentium Dでは1つのコアが使える2次キャッシュは最大1MBだが、Yonahなら1つのコアが最大2MBのキャッシュを使える。
Yonahでは、チップセットとのデータ転送路(FSB)の速度を決める動作周波数も、これまでの533MHzから667MHzに引き上げられている。最新の65nmプロセスで製造され、実装されるトランジスタ数は1億5160万個(現在のPentium Mのトランジスタ数は7700万個)になる。
Yonahは、チップセットのCalistoga(カリストガ、開発コード名)、無線LANモジュールのGolan(ゴラン、開発コード名)と組み合わせて、次世代Centrinoとして市場に出る。チップセットや無線LANモジュールの詳細は明らかになっていないが、Calistogaではグラフィックス性能が強化される。
パソコンメーカーの開発関係者に新CPUについて尋ねると「性能面ではかなりの向上が期待できる」と評価する声が多い半面、「デュアルコア化で消費電力が増えることが心配。ファンレスノートは作れないかも」という声も聞こえてきた。モバイルノート用にはシングルコアにして消費電力を押さえた「超低電圧版Yonah」が採用される可能性もある。
一方、Yonahの弱点は64ビット技術「EM64T」に対応していないこと。64ビット対応を見送った理由としてインテルは「トランジスタを追加する必要があるし、そのために消費電力も増えてしまう。それに対応ソフトもまだ少ない」と説明する。ノートの64ビット対応はYonahの次の2006年後半登場のMerom(メロム、開発コード名)からになるとみられる。なお、Merom世代では、デスクトップ用にもMeromベースのCPUが使われることになるといわれている。