社会環境の変化によって進むモバイルシフト
最新のモバイルデバイスを活用し、ワークスタイルの変革を果たしたい――こう考える企業や組織が、ここ数年で着実に増えている。
もちろんこれまでも、サテライトオフィスやフリーアドレス、在宅勤務などを試みる企業や組織は存在していた。ただ、それが広く定着するまでに至らなかったのは、切迫したニーズがなかったからだと言えるだろう。また2005年に「個人情報保護法」が施行されてからは、情報セキュリティの確保などを理由に、社外からの情報アクセスを制限する動きが進行。普及に歯止めがかかる状況となった。
しかし、このような状況が、ここ2~3年の間に大きく変わりつつある。その背景にあるのは、私たちを取り巻く環境の変化だ。
特に大きな契機になったのが、2011年3月11日に発生した東日本大震災である。オフィスが被災した企業はもちろんのこと、そうでない企業でも、震災発生後は交通網の乱れなどから、平常業務に戻るまでにかなりの時間を要した。この経験から「場所を選ばない働き方の重要性」が多くの人々に認知されることとなったのだ。
生産年齢人口が減少し、労働市場や競争環境が変化していることも、この動きに拍車をかけている。限られた人員で今までと変わらない生産性を維持するには、各人の能力を最大限に引き出す、柔軟かつ効率的な働き方を実現することが重要だからだ。そのために、取得・保有にコストのかかる情報資産を、これまで以上に有効活用できる仕組みも必要になってくる。
このような環境変化に加え、技術の進化も、ワークスタイルのモバイルシフトをさらに後押ししている。具体的には、モバイルデバイスの高機能化や、クラウドの普及などだ。実際、モバイルデバイスを活用することで、従業員の業務効率を高め、情報資産の有効活用や、顧客満足度の向上を実現している企業や組織も少なくないのだ。
では、モバイルデバイスによって、ワークスタイルを変革するには、どんな点がポイントとなるのか。次ページからは、先行企業3社の事例を通じて、成功の秘訣を検証していく。