企業システムにおけるデータの保存方法として「磁気テープ」の利用が広がりつつある。2010年から「データ記録用磁気テープ」の生産量は上昇に転じ、毎年連続で増加している。バックアップ用として捉えられがちな「テープ」にいったい何が起きているのか。そこには、ビッグデータやクラウド時代の“次世代ストレージシステムの姿”を睨んだテープ再評価への動きがあった。
膨大なデータの保存と活用にテープという選択肢が急浮上
テープ需要の高まりは、欧米では顕著に表れており、日本でも徐々に高まりつつある。その契機となったのが、3年前の東日本大震災だ。被災地の自治体などでは、津波によって貴重なデータが失われ、復旧や復興に大きく影響するケースもあった。これにより、データ保存の重要性があらためて認識されるとともに、バックアップ用として容量当たりのデータ保存コストが安価なテープへの関心が高まった。
「テープの復権」の理由はそれだけではない。背景にあるのは、ビッグデータ時代を迎え、企業経営のスタイルが大きく変化しようとしていることだ。日本IBMでストレージ事業の責任者を務める波多野敦氏は「データは天然資源。使うかどうかで大きな差が生じます。これまで活用されずにいたデータを活用し、収益につながる知見を引き出す経営スタイルが加速しています」と、企業の経営スタイルの変化を指摘する。
ゲノムの分野では大規模な実験の観測データを丸ごと保存し、タテ、ヨコ、ナナメ、あらゆる角度から分析する。また、デジタル化されたメディアの世界では、データをアーカイブしておくことが当然のことに。しかも、4Kテレビの時代になれば、フルハイビジョンテレビの4倍の解像度の画素数となり、データ量は今の4倍になる。
さらに最近目立っているのが、製造業の事例だ。波多野氏は「たとえば、自動車業界。車に搭載されているCPUやセンサーからデータを収集・分析することによって走行安全の向上につなげる。このようなデータ活用が広がっています」と話す。
しかし、なぜ「テープ」なのだろうか。膨大なデータを経済的に扱う場合、まず考えるのはクラウドだろう。しかし、データを預けるのは安価にできるが、いざクラウドからデータを引き出して活用しようとすると意外と費用がかかる。また、セキュリティー面での不安もある。「オンプレミス」「大容量」「リーズナブル」という条件、その最適解がハードディスクではなくテープだったのだ。