ITが企業活動を支えるインフラであることは論をまたない。しかし今、高い業績を上げている企業におけるITのポジションはそのレベルにはない。ITで競争優位を実現し、ITによって収益の向上も実現させている。しかも、その貢献度の大きさはこれまでの業務改善の枠を超えた“ビジネス変革”のレベルに達しようとしている。それができている企業と、できていない企業の差はどこにあるのだろうか。

3つの成功事例にみる共通した成功要因

 ある自動車メーカーは、顧客離れに悩まされていた。顧客満足度が低下し、顧客離れは深刻なレベルにあった。売上を拡大するために「新規顧客の獲得」が求められ、その一方で顧客の維持コストは増大し、収益を圧迫していた。そこで同社では、構造データ、非構造データにかかわらず、眠っていた顧客情報を広く有機的に統合させてアナリティクスを実践。不満を抱く可能性のある顧客を予測し、先回りして対策を講じるプログラムを導入した。その結果、30%の顧客の満足度を向上させ、新車を購入する見込み顧客へと変えることに成功した。

 また銀行では、多額の費用をダイレクトメールなどによるマーケティング・キャンペーンに投じているが、ある銀行では、ダイレクト・マーケティング・キャンペーンに多額のコストを費やしながら、その効果が上がっていないことが大きな問題になっていた。大量に保有している顧客の情報資産も、従来の情報技術では十分に活用することができなかった。しかし同行では、膨大な顧客情報を扱うことのできる分析基盤を構築して顧客セグメンテーションを行い、対象となるターゲットを明確にしたうえでマーケティング・キャンペーンを実施した。これにより、マーケティングの費用対効果が600%向上した。

 さらに、コールセンター業務が重要なファクターとなる通信業界では、コールセンターのオペレーターによる顧客対応力が顧客維持率に結びつく。そこで、ある通信企業では顧客対応時にオペレーターが参照するディスプレーに、推奨される顧客対応方法をリアルタイムで表示するシステムを構築。このアナリティクスを駆使したシステムによって顧客維持率が20%向上した。

 顧客満足度の向上やマーケティングの強化などはどの企業でも取り組んでいるはずだが、上記の3つの事例には「画期的な共通点」がある。それは、営業部門やマーケティング部門ではなくIT部門が変革をリードして大きな成果を上げた点だ。なぜ、こうしたことが可能になったのだろうか。

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