事業の中核を成す大規模地図データの戦略的活用

株式会社ゼンリン
執行役員
制作本部長
西村 仁哉 氏

 スマートフォンで地図を検索し、目的地までの最短ルートや所要時間、周辺施設などを確認することはもはや日常になった。ゼンリンは、私たちの暮らしを変えた「デジタル地図情報サービス分野」で国内トップシェア、カーナビゲーションシステム向け地図では市場の約7割を占める業界の巨人である。執行役員 制作本部長の西村仁哉氏は、次のように話す。

 「大手検索サービスでも採用されているデジタル地図情報を活用したサービスや商品は、大きな広がりを見せています。私たちは、空間情報(道路、交通標識、路面ペイント、建物、テナント情報など)を、地物として時間軸で収集・管理し、必要な時空間情報のみを利用しやすい形式で提供する“時空間情報管理システム”の開発に取り組んでいます」

 全国市区町村の約99%をカバーする詳細な住宅地図は、他に例のないゼンリンの独壇場だ。全国約70拠点、1日約1,000人の調査スタッフを動員して様々な情報を詳細に収集するその機動力は、他の追随を許さない。

 「1948年の創業以来、調査スタッフが自分たちの足で情報を面でくまなく収集する調査手法は、今も継承しています。大きく変わったのは、各種の調査計測車両により収集される高精度な位置情報や画像情報を加えた情報の多様化と高度化=大容量化、そして日々刻々と変わる情報をタイムリーに多様なサービスや商品へ反映させるスピードです」(西村氏)

 ゼンリンの強さを際立たせているのは、膨大な時空間情報を“収集・管理・提供”し続ける圧倒的な組織力と、それを支える戦略的なIT活用である。

 「たとえば、全国の幹線道路の開通やそれに伴う交通規制の変更などの情報を、リアルタイムに情報配信し、ナビゲーションの経路案内に反映させるための情報更新技術の開発に長年取り組んでいます。しかし、情報には鮮度とともに常に精度が問われます。“ゼンリンの地図は正確で信頼できる”という評価をいただけてこそ、付加価値の高いサービス開発にも取り組めるのです」(西村氏)

 地図情報と様々な属性情報は、ゼンリンが独自に開発したオブジェクト指向のデータベースシステム上で管理される。ゼンリンにとって、文字通り“生命線”と言えるミッションクリティカルなシステムだ。

 「日々アップデートされる情報をタイムリーにシステムに反映し、住宅地図、カーナビ、携帯電話・スマートフォンをはじめとする様々な地図情報サービスや商品に展開していきます。データベースシステムは私たちの“生産設備”であるとともに、お客様にサービスや商品をご提供するための“ビジネス基盤”でもあります」(西村氏)

図1●1日約1,000人のスタッフが収集した情報を、約1,000人のオペレーターが入力する。
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