国内市場が縮小する中で企業が生き残るためにはグローバル市場を果敢に攻めていく必要があり、多くの企業がその解を求めている。そこで日経ビジネスオンラインとNTTコミュニケーションズは2012年10月4日、グローバル化を加速するユーザー企業のエグゼクティブ層を対象に、「グローバル展開の成功の秘訣を探る」と題した「クラウド経営サミット エグゼクティブフォーラム」を都内で開催した。

株式会社テックバイザージェイピー
代表取締役
栗原 潔 氏

 午前のフォーラム1では、テックバイザージェイピーの栗原潔氏が登壇し、「ジェフリー・ムーアに学ぶ『脱出速度』経営とクラウドの役割」と題する基調講演を行った。「キャズム」や「ライフサイクル・イノベーション」の著者でありまた米国のトップ・コンサルタントとして知られるジェフリー・ムーア氏の最新作「エスケープ・ベロシティ」(2011年12月14日発行)を翻訳した栗原氏自身が、その要点を語った。

 栗原氏は、「ほとんどの日本企業にとってグローバリゼーションは不可避の選択肢となっています。グローバル化する市場で生き残るためには、『業界の常識』や『社内の抵抗勢力』の引力に打ち勝つ『脱出速度』(エスケープ・ベロシティ)を達成するイノベーションが必要なのです」と示唆した。

 そこで重要となるのが、ムーア氏が提供した「コア‐コンテキスト・フレームワークによるポートフォリオ管理」の考え方であり、企業にとっての「差別化要素」と「稼ぎ頭」の混同を防ぐ上での有効な手立てになるという。

 企業がグローバル市場で活躍するためには、将来の差別化の源泉や「脱出速度」達成のエネルギーとなるコア(差別化を生み出す企業活動)業務に経営資源を回す必要があるが、現場の意思決定だけに任せておくと、長期的にコンテキスト(コア以外の企業活動)に割り当てられる経営資源が過剰になり、コアに十分な経営資源が割り当てられなくなる。「だからこそ意識的に経営資源の再配分を行い、イノベーションの火を絶やさないことが重要なのです」と栗原氏は語った。

 また、ポートフォリオの様々な領域において、ビジネス上の価値を提供する戦略的武器としてクラウドを活用すべきであり、栗原氏は「特に“Fail Fast, Fail Cheap”の経営理念をサポートする『撤退容易性』を確保できることは、オンプレミスでは実現しにくいクラウドならではの価値です」と指摘した。

図1● コア‐コンテキスト・モデルとクラウドの適用
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