変速機メーカーのジヤトコは、連結決算上の親会社に当たる日産自動車とともに開発プロセス改革活動「V-3P*1」に取り組んだ結果、以前よりも開発期間の短縮が進み、試作の回数が減った*2。変速機をはじめとするパワートレインの開発期間は車体よりも少し長く、以前には24カ月だったところが、現在では14~16カ月になっている。V-3Pではデジタルデータを用いた設計検討を強化して、時間のかかる試作の必要をなくすことが重要なポイントだった。

*1 V-3P コンピュータ・システムによる設計開発を全面的に取り入れ、データを衝(正)とすることによって品質の早期作り込み、開発期間の短縮を目指す改革活動。2001年に始まった。「ブイさんピー」と発音することが多い。

*2 顧客向けのバリエーションごとに試作品を造るため、1バリエーション当たりの試作回数は減っているが、バリエーション自体が増えているため、試作の総数は減っていない。

 それで試作部門の役割が軽くなったかというと、そうではなかった。確かにデジタルデータによる設計検証が本格化するに連れて、設計段階の問題の洗い出しと解決の役割はある程度コンピュータ・システムに移った。その代わり試作に求められるようになったのが、量産要件を早期に検討することである。

 同社は静岡県内の本社地区にある試作工場内に「パワートレインGPEC」と呼ぶ施設を設置した*3。ここで試作を通して量産要件を徹底的に造り込み、世界各地の工場にそのまま移管する体制を確立した。現在の無段変速機の主力製品である「CVT7」(軽自動車用)、「CVT8」(排気量2~3.5Lの乗用車向け)の量産品質を確立したのも、パワートレインGPECである(図1)。

*3 日産自動車が車体に関して神奈川県座間市に設立した「グローバル車両技術センター(GPEC)」のパワートレイン版という位置付け。GPECは主に設計完了後に量産要件を造り込む場であるの対して、パワートレインGPECは設計完了前から活動する。

図1●ジヤトコの無段変速機「CVT8」
排気量2~3.5Lの乗用車向け。最初から海外工場で量産を開始するために、試作工場に設けた「パワートレインGPEC」で量産性を検討した。

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