音響や振動に関する検討は、試作品でも実機でも、現物を測定することが必要になることが多い。これまでも静音化は自動車や家電製品をはじめ、さまざまな製品で実行されてきたため、現物がなくても静音化はある程度可能だ。しかし、音がユーザーに与える印象や心地よさ、あるいは不快さといった、ユーザーの感性に関わることはシミュレーションだけではなかなか分からない(図1)。
音響・振動測定機器メーカーの小野測器は、音響・振動に関するコンサルティングも手掛けている。主な顧客は自動車メーカーや部品メーカーだが、分野を問わずさまざまなメーカーが現物を持ち込んで相談に来る。「設計開発段階で試作品を評価する案件もある。以前よりも製品開発の上流で協力する機会が増え、構想設計段階で音の設計方針を決めるのを手伝う案件も、だんだん依頼されるようになってきた」(同社技術本部カタログ製品ブロック・コンサルティンググループ・グループマネージャーの石田康二氏)という。
その背景の1つが、音についての検討目的がここ5年くらいで大きく変わってきたことだ。「以前は音の大きさをいかに減らすかが目的だった。現在は音の低減に加えて、人が聞いて快いかどうか、高級感を感じるかどうか、といった感性に関わる評価が重要になっている。音の質が製品の価値を左右するようになってきたことから、設計開発段階でいかに製品にマッチした音にするか、高級感や上品さをどう音でデザインするかのニーズが高まっている」(同氏)。