広がるデザイン思考

 デザイン思考が、にわかに世の中で議論され始めている。テクニカルコミュニケーション・シンポジウム、いわば取扱説明書やマニュアルなどをビジネスとする方々の集まりが、国際シンポジウムとして、今年も東京と京都で開催される。そのテーマが、今年は「デザイン思考」に決定した。昨年から、経済産業省のデザイン思考委員会の委員も務めた関係で、このシンポジウムに、私もパネラーとして声がかかっている。

 それ以外にも、サービス分野でのデザイン思考や、昨今は経営マネジメント分野でもデザイン思考の導入が重要だとの見方が、特に欧米を中心として議論され、一般化してきた。

仮説構築力/可視化/プロトタイピング

 このデザイン思考は、持論ではあるが「仮説構築力」と「ビジュアライゼーション(可視化)」によって成り立つと私は考えている。加えて、「UXアジャイル」という言葉をAdobe社も用いているなど、プログラミングの分野でアジャイル開発が盛んなように、UXの分野でもアジャイルの導入が進んでいる。具体的には、上記二点に加えて、早期の上流工程でのプロトタイピングの繰り返しによるお客さまとの合意形成が、昨今議論されているデザイン思考ではキーポイントとなる。

デザイン思考を提案書に生かす

 アジャイルのような話が入ると、どうしてもユーザビリティ改善やUI(ユーザーインターフェース)開発と思われがちだが、今回のコラムのテーマである提案力の向上、具体的には提案書の作成でもデザイン思考は効果が十分期待できると思う。このデザイン思考は、すでにデザイン事務所の特技でもなければ、企業内デザイン部門の特別メニューでもない。幅広い分野でデザイン思考は、その利用価値や効果が期待され始めている。

 中でも提案書のUX改善は喫緊の課題で、そこにデザイン思考を反映することは、そのまま受注に直結する最短ルートと言っても過言ではない。最近、ハウスメーカー各社の提案書を比較する機会があったが、明らかにそのアプローチは違ってきている。

 アパートやマンション建築なので、マーケティングフィールドはBtoB、加えて受注予算額も数千万から億の単位となり、IT企業がビジネスで取り組む事業規模とそう大きくは変わらない。ところが出てくる資料は、けっしてそのメーカーの一方的な説明資料ではなく、現場把握としての勉強資料から当初は始まる。いわゆる三現主義の徹底だ。現場、現物、現実。確かに、提案の基礎はそこから始まるべきだと、今更ながらだが痛感した。

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