Linux技術者認定試験(LPIC)のアップデートや新たな試験の開発に際して、スポンサーなどの意見を聞くために来日したLPI本部のG.Matthew Rice氏にインタビューした。年末に開始予定の新試験やLPICの更新内容について聞いた。

(聞き手は手嶋 透=日経Linux


写真1●カナダのLPI本部で試験開発責任者を務めるG.Matthew Rice氏
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今回来日した目的は何か。

 LPICレベル1(LPIC 1)と仮想化や可用性について問うLPI 304試験のアップデート計画に関してスポンサーなどの意見を聞くほか、現在開発中の新たな技術者認定試験について協議するためだ。今年の年末に、オープンソースのクラウド基盤に関する試験開始を計画している。

オープンソースのクラウド基盤としては、OpenStackやCloudStackが注目を浴びている。新たな試験は、これらにフォーカスしたものになるのか。

 世界に向けて配信するのは、今後急速に普及することが予想されるOpenStackの技術者認定試験になる。OpenStackはユーザー主体のコミュニティーによって活発に開発されており、現状では荒削りなところや、出来上がっていない部分もあるが、Linuxのようにユーザーと開発者の距離が近く、多くのエンジニアの心を引き付けている。

 一方、CloudStackは米Citrix Systems社がApache Software Foundationに寄贈したもので、完成度が高い点が大きな魅力だ。日本ではCloudStackが実績を持ち、また人気も高いことは承知している。そこで、日本においてはCloudSatckの技術者認定試験についても配信できるよう、LPI-Japanが主体となって試験開発を進めている。

OpenStackは幅広い機能群で構成されている。認定試験の出題範囲は、どうなるのか。

 具体的な出題範囲についてはこれから詰めていくが、仮想マシンイメージの配信先となるNovaや、仮想マシンイメージを管理するGlance、ブロックボリュームを管理するCinder、認証機能のKeystone、ダッシュボード機能のHorizon、仮想ネットワークを管理するNeutronなどについての問題を出題することになる。

サーバーのインフラエンジニアはネットワークについて、ネットワークエンジニアはサーバーについても理解する必要があるということか。

 そうだ。OpenStackのようなクラウド基盤を支えるエンジニアは、サーバーについてだけ、あるいはネットワークについてだけ知っているのでは不十分だろう。OpenStackは各種コンポーネントが連携しながら動作するものなので、全体をよく分かっている必要がある。

OpenStackの技術者認定試験は日本でも今年末に開始されるのか。

 現在のところ、翻訳に要する時間を考慮すると、年末に開始できるのは北米にとどまる見込みだ。日本で開始できるのは2015年に入ってからとなる可能性がある。試験問題を翻訳するとなると、どうしてもタイムラグが生じてしまう。

LPIC 1は、見直しによって何がどのように変わるのか。

 Linuxで使われている技術の変化をキャッチアップするため、出題範囲の変更を伴う大がかりなアップデートを今年の年末に行う。例えば、初期化プログラムでは従来のSysVinitの代わりに、systemdの採用が広がっているが、こうした動きに追従する。そして、来年早々から新版の試験を配信する。

 実は、LPIC 1や2の試験内容については年2回、LPI 304試験を含むレベル3については年に1回、試験内容を見直している。ただし、通常は各主題における配下の項目についての重要度(出題の比重)の調整にとどまる。今回のような大規模な見直しをするのは5年ぶりのことだ。

LPI 304試験では、何が変わるのか。

 KVMが広く使われている状況を試験に反映させるため、XenとKVMの重要度をそろえる。また、virshやlibvirtなどの仮想マシン管理コマンド、最近注目を浴びているLinuxコンテナーについての問題を盛り込むなどする。