現在、IT部門を取り巻く脅威は、大きく3つある。
1つは、デジタル化だ。様々なIT同士をつなげるIoT(モノのインターネット)や4つの力(モバイル、クラウド、ソーシャル、インフォメーション)の組み合わせである「Nexus of Forces」といった新しいテクノロジーを活用したビジネスモデルが次から次へと生まれている。
例えば、重機にセンサーを付けて、稼働状況などのデータを保守などに活用するコマツの「KOMTRAX」や、農業クラウド、スマートフォンとクラウドを活用したタクシーの予約システムなどがそうだ。こうしたビジネスモデルを作ることを、ガートナーでは、「デジタル化」と呼んでいる。
このデジタル化に、IT部門は関与できていない場合が多い。ビジネスモデルを考えるのは、あくまでもビジネス部門だからだ。では、IT部門は何をやるべきなのか?システムの運用管理だけをやっていればいいのか?まさに今、IT部門の存在意義が問われつつある。
デジタル化に対応できるスキル、人材が不足している
IT部門を取り巻く2つめの脅威は、IT投資の最適化である。
リーマンショック後、コスト削減のためのIT投資の最適化が進んだ。その一方で、「ITで本当に効果が出ているのか」と、経営者は疑問に思い始めている。このため、IT部門は、ITのビジネス上の効果を証明せざるを得なくなっている。これができれば、経営者にIT投資の価値を認めてもらえるが、これが難しい。
現状でも、システムのROI測定(金額評価)をしているのは、従業員1000人以上の企業で、わずか6%しかいない(図)。ITの評価は、ほとんどできていないのだ。
デジタル化が進むと、IT投資の価値を証明することは、今よりももっと難しくなる。様々なIT同士の接続が増えてシステム全体が複雑になると、ますます価値を測りにくくなるからだ。
3つめの脅威は、人材・スキル不足である。
現在のIT部門には、組織を変革・推進するリーダーシップを取れる人材も、新しい技術に対する理解力と活用提案力を持つ人材もいない。この2つのスキルがないと、デジタル化には対応できない。
実際、2013年5月に実施した調査では、「IT部門で不足しているスキルや知識は何か」 という質問に、65%が「組織を変革・推進するリーダーシップ」、54%が「新しい技術に対する理解力と活用提案力」と答えている(図参照)。