インターネットの運用や技術について話し合う日本の技術者コミュニティ「JANOG」(JApan Network Operator's Group)ではメーリングリストで議論をするとともに、ミーティングで技術者同士が顔を合わせて盛んに情報交換を行っている。“実践的”な情報のやり取りができるというJANOGは、どんな集まりなのか。JANOG運営委員会の川村 聖一氏(ビッグローブ)と松崎 吉伸氏(インターネットイニシアティブ、以上写真1)、JANOGミーティング34実行委員会の岡田 雅之氏(日本ネットワークインフォメーションセンター)、黒河内 倫氏(グリー)、高嶋 隆一氏(ミドクラジャパン)、松下 和弘氏(イプリオ、以上写真2)に聞いた。

(聞き手は田村 奈央=日経NETWORK


写真1●JANOG運営委員会 会長を務めるビッグローブの川村 聖一氏(右)と、運営委員のインターネットイニシアティブ 松崎 吉伸氏(左)
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写真2●今回話を聞いたJANOGミーティング34実行委員会のメンバー。左から黒河内 倫氏(グリー)、高嶋 隆一氏(ミドクラジャパン)、松下 和弘氏(イプリオ)岡田 雅之氏(日本ネットワークインフォメーションセンター)
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まずJANOGとはどんなコミュニティなのかを教えてください。

川村氏 1997年に活動を開始した、ネットワーク技術者のコミュニティです。メーリングリストで随時、情報を交換するほか、年2~3回ミーティングを開催してネットワークの運用や技術について議論しています。今のメーリングリストの登録数は約6600、ミーティング参加者数は会場が東京だと約800人、地方でも400~600人くらいの規模ですね。公式ポリシーでは、JANOGは「インターネットにおける技術的事項、および、それにまつわるオペレーションに関する事項を議論、検討、紹介することにより日本のインターネット技術者、および、利用者に貢献することを目的としたグループ」なんですが、実態はそんなに堅苦しいものではありません。技術者同士が率直に話をできる、情報交換の「場」だと思っています。

松崎氏 話題になっているバグやセキュリティホール、流行の機種、好きなツール、イケてる装置の組み合わせなんかを共有したり、問題点について一緒に悩んだりする集まりなんです。そういう意味では、「ソリューションはないけど、たくさんのプラクティスがある場所」って言う方が実態に近い。

川村氏 例えば企業のセミナーだったら、最終的にその企業の製品やサービスを買ってほしいなど、開催側にも達成したいビジネス上のゴールがありますよね。彼らは顧客に「ソリューション」を提供することで、ビジネスをしているわけです。一方で、こうしたセミナーではフラットな立場で技術者同士が情報交換するには壁があります。コミュニティではそうした壁がなく、「こんな小さな悩みがあるんだけど、ほかの技術者はどうしているのかな?」と口に出すと、同じ悩みを抱えていた別の組織の人から「うちの会社はこうやってその問題を回避しています」と、実践的な「プラクティス」の話を聞けることがあるんです。そこが良いところですね。

松崎氏 ただし、コミュニティで得られる情報はあくまでも「うちの会社はこうしたらうまく行った」という実例の集まりです。ソリューションのように親切にかみ砕かれた、そのまま適用できるような情報ではないことが多い。ですから、自社ネットワークへの適用方法は各自で改めて検討する必要があります。

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