ほぼ満席となった会場。撮影:後藤 究(以下同)

 企業を支える基幹システムの大半はCOBOLで開発されており、COBOLアプリケーションは重要なソフトウエア資産である。近年では、COBOLの実績や使い勝手が見直され、基幹システムをオープン系で再構築する際にも、開発言語としてCOBOLを選択するケースが増えている。

 そこでCOBOLコンソーシアムとITpro Activeは2014年4月24日、『先を見据えたマイグレーションで「未来」への扉を開く』をテーマに、第22回目となるセミナーを東京で開催した。基幹システムの再構築にCOBOL言語を適用するメリットや、マイグレーション手法の実際、企業システムとCOBOLの将来像などを解説した。

 基調講演では、ノークリサーチの岩上由高氏が、基幹システムのマイグレーションについて市場調査から見た動向を解説。続いて、JP情報センターにおけるマイグレーション事例の紹介、マイクロフォーカスと日立製作所による製品サービス紹介、主要ベンダーによるパネルディスカッションが行われた。

基調講演
COBOLは現役で通用する
「COBOL=メインフレーム/オフコン」との思い込みは危険


 企業では、レガシー(古い遺産)なシステムをオープン系システムに移行する“レガシーマイグレーション”が進んでいる。基調講演では、ノークリサーチの岩上氏が登壇し、市場調査から見えるレガシーシステムの実態を分析。COBOL言語はレガシーではなく、オープン系システムでも積極的に使っていくべきであると結論付けた。

ノークリサーチ シニアアナリスト
岩上 由高 氏

 岩上氏はまず、企業が保有するレガシー資産の現状を、ハードの種別を切り口として市場調査データ(*1)で示した。年商5億円以上の企業1000社中4~6割が、現在もメインフレームやオフコンといった「レガシーハードウエア」を使っており、年商が大きくなるほどレガシーハードウエアの保有率は上がる傾向にあるという。

 岩上氏は、レガシーマイグレーション手法を4つに分類。作業量が多いものから順に、(1)リエンジニアリング(リビルド)、(2)リライト、(3)リホスト、(4)リプレース---とした。リエンジニアリングやリライトは、COBOL以外の言語でシステムを再開発する。一方、リホストはCOBOL資産を残したままOS/ミドルウエア環境を変更する。リプレースはハードウエアだけを置き換えるものだ。

 この一方で、マイグレーションにおける典型的な課題は3つあるという。(a)ビジネスロジックやソースコードがブラックボックス化してしまっていること、(b)COBOL言語を理解できる人材が少ないこと、(c)現状のアプリケーションをCOBOL以外の言語で再現できるかどうか分からないこと、---である。これらの課題を踏まえて、マイグレーション手法を選択する必要がある。

 では実際に、企業はどういったマイグレーション手法を選ぶのか。岩上氏は、レガシーシステムに関する今後の方針に関する調査データ(*2)を示した。これによると、回答企業の2割程度は現状のシステムをそのまま使い続けると回答し、同じく4割程度がバージョンアップをしながら現状のシステムを使い続けると回答した。マイグレーションを計画している企業(上記の4つの手法のいずれかを選んだ企業)は少数派であり、レガシーマイグレーションは容易ではないことが分かる。

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