写真●イーウェルの福利厚生パッケージサイト「WELBOX」の画面
写真●イーウェルの福利厚生パッケージサイト「WELBOX」の画面
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 企業の福利厚生サービスを受託しているイーウェル(東京・千代田)は、会員企業の従業員向け専用ウェブサイトの利用実績を分析するツールを2013年秋に導入し、サービス利用率の向上を図っている。従来は手作業で半日がかりだったという会員情報と利用実績をひも付けた分析が、企業人事部のニーズに沿って瞬時に分析レポートを出せるようになったという。

 イーウェルは、約1000社から福利厚生サービスを受託業務として一括して引き受け、会員となる従業員300万人に宿泊施設やフィットネスクラブ、託児所などを割安に提供している。宿泊施設は国内だけで約2万軒、フィットネスクラブなど生活分野サービスは3500件ほどに上るという。契約は企業と結び、サービスは従業員に提供する「BtoBtoE」という形態だ。

 従来は会員企業の従業員にガイドブックを配ってサービスの情報を提供していた。現在ではウェブサイトでの利用申し込みが9割以上を占める。企業にとっては、福利厚生サービスの利用率向上が課題。そこでイーウェルは、会員の従業員がサイトにログインして利用した実績を契約企業に定期的に報告する。サービスを提供する宿泊施設などのサプライヤーにも、広告効果や利用者属性を把握したいというニーズがある。サービスの利用率を高めるには、いわば「BtoC」に近いウェブマーケティングの手法が必要となっていた。

 ところが、会員データや宿泊予約などサービス利用実績のデータは、表計算ソフトでは処理しきれない量に増加。ウェブサイトのアクセス解析は従量課金型のツールを利用していたため、データ取得にコストや時間がかかった。

 契約企業に提供しているウェブサイト(写真)は同一URLなので、利用実績を分析するにはログインする会員の所属企業ごとにデータを切り分ける必要もあった。「会員情報もウェブのアクセスログもあるのに、分析できるツールがない」(イーウェルの小野陽弘サービス企画本部副本部長)という悩みがあったという。

 そこでまずは利用実績を分析するため、2011年にBIツール「QlikView」を導入。さらにアクセス解析では、既存のウェブサイトの全ページにタグを埋める作業しなくてもアクセス解析ができるオーリック・システムズの「RTmerics BIQQ」を2013年に採用した。QlikViewと連携して会員情報とアクセス情報と会員情報をひも付けして、例えば会員属性や契約企業別のクロス分析が簡単にできるようになった。

 企業によっては、利用者に補助金やポイントプログラム、割引価格を提供した場合の施策の効果や利用傾向を知りたいというニーズが強い。同規模の会社と比較してサービスが効率的な使われ方をしているか知りたいという要望もある。いわば企業の福利厚生担当者の代わりに、「マーケティングをする発想」が進めやすくなったという。

 イーウェルは、これまで従業員に一つしか与えられなかった福利厚生サービスの利用者IDに加えて、家族向けのIDも提供して、利用状況を個人単位で分析できるようにした。今後はサービスを提供するサプライヤー側の営業担当者にも分析データを提供して、きめ細かなマーケティングを目指している。