1.客室乗務員(CA)に約5000台のiPad miniを配布。目的は、紙媒体の電子化によるコスト削減と情報伝達方法の改善、業務知識習得によるサービス品質の向上。
2.運航乗務員(パイロット)にも約2000台のiPadを配布済み。今以上に安全で快適な空の旅を提供するために、操縦室で活用する予定。

 日本航空は、2013年7月から、客室乗務員(CA:キャビンアテンダント)に対して、約5000台のiPad miniの配布を段階的に開始(写真1)。2014年2月から本格運用を開始した。運航乗務員(パイロット)にも、2000台のiPad Retinaディスプレイモデル(第4世代)を配布済みで、操縦室内での活用に向けた準備を進めている。

写真1●客室乗務員の搭乗前ブリーフィング風景(iPad miniを参照している)
写真1●客室乗務員の搭乗前ブリーフィング風景(iPad miniを参照している)

スキルを高めて、サービス品質を向上

 客室乗務員へiPad miniを配布した狙いは、大きく3つある。

 1つは、紙媒体の電子化によるコスト削減。「紙媒体を電子化することで、印刷費用を削減できるほか、マニュアル類など業務携行品を電子化すれば、機体重量軽減による燃費の削減にもつながる」(客室本部 客室企画部 計画グループ 主任の野口 覚人氏、写真2)。

写真2●客室本部 客室企画部 計画グループ 主任の野口 覚人氏

 2つめは、客室乗務員への情報伝達の改善だ。

 「客室乗務員と会社の接点は、出発前と帰着後が中心であり、これまでの情報伝達は紙媒体の配布・掲示が主流だった」と野口氏は言う。実際、客室乗務員はオフィスに専用の机を持っていないため、情報を伝えるためには、乗務の前後に客室乗務員をつかまえて伝えるか、掲示板にメモを貼ったり、メールボックスに紙を入れておくしかなかった。これを電子化することで、「タイムリーかつ内容の濃い情報伝達を可能にしたかった」(野口氏)。

 3つめは、「iPad miniを利用した業務知識習得によるサービス品質の向上」(同)である。

 サービスが多様化し複雑化する中で、客室乗務員が憶えなければならない情報量は増加傾向にあるが、これまでは、それを学習する手段が限られていた。例えば、学習用の動画コンテンツを見せるためには、据え置きのディスプレイの前に集まってもらう必要があったが、客室乗務員を拘束できる時間は短いため、コンテンツの内容も短くせざるを得なかった。さらに、客室乗務員によって、知識やスキルの習得状況にも差があった。

 どこにでも持ち運べるiPad miniで自己学習できるようにすれば、こうした状況を改善できる。「動画コンテンツや自己学習コンテンツの作成・配信を通して、全体的にスキルを高めて、お客様に提供するサービス品質をさらに向上させたかった」(野口氏)。