最新の情報がいつでもどこでも得られる

 実際にiPad miniを使っている客室乗務員は、iPad導入の効果を強く感じている。客室乗務員の佐々木 舞子氏(写真4)は、「一番便利に感じているのは、安全のための情報にせよ、サービスの情報にせよ、最新の情報がいつでもどこでも得られるようになったこと」と語る。

写真4●客室乗務員の佐々木 舞子氏
写真4●客室乗務員の佐々木 舞子氏

 例えば、日本航空には、顧客へのアンケートをリアルタイムで集計して毎日配信する「デイリーバリュースコア」という仕組みがある。これをiPad miniで閲覧することで、直近の顧客の声を確認し、次の乗務に役立てることができる。「一便ごとに、改善すべき点や、良いと思ってもらっている点が、すぐに分かるようになった。すぐに改善できるようになった」(佐々木氏)。

 サービスマニュアルや学習コンテンツが電子化されたことも、顧客サービスの向上につながっている。「紙の媒体では、ページを探すこと、めくること、線を引くことに時間がかかっていた。iPad miniでこうした時間を短縮できる。浮いた時間を、顧客のことを考えてサービスを企画する時間に当てられるようになった」(佐々木氏)。

 動画/音声を駆使した学習コンテンツにも満足している。「ミール(機内食)の盛り付け方法を動画で見られる。英語の学習では、インストラクターの音声を聞いて学習できる」(同)。

操縦室内でiPadを有効に活用したい

 客室乗務員だけではなく、運航乗務員(パイロット)も、タブレット(iPad)を活用する予定だ。既に、2000台のiPad Retinaディスプレイモデル(第4世代)を配布済みで、現在、操縦室で活用するための準備を進めている。

写真5●運航本部 運航業務部 業務グループ マネジャーの江向 雅幸氏
写真5●運航本部 運航業務部 業務グループ マネジャーの江向 雅幸氏

 運航乗務員へのiPad導入を推進している運航本部 運行業務部 業務グループ マネジャーの江向 雅幸氏(写真5)は、「米国や欧州では既に、携帯端末の試験運用が開始されている。日本でも、国土交通省の航空局を中心に、携帯端末活用を基本とした運航環境の整備が検討されている」と語る。

 現在は、操縦室のドアが閉まった後は、操縦室内で携帯端末を利用できない(電源を切らなければならない)。しかし、2014年内にも、法律(告示)が変わり、操縦室のドアが閉まった後でも携帯端末を利用できるようになる予定だ。この法改正を待って、「今以上に安全で快適な空の旅を提供できるように、操縦室内でiPadを有効に活用したい」(江向氏)。

写真6●運航本部 運航訓練部 787訓練室 飛行訓練教官 787機長の毛利 義宗氏

 具体的には、航路図や航空機のマニュアルなどをiPadで閲覧できるようにするほか、最新の空港周辺の天候情報を入手し、揺れの少ない高度などを把握できるようにする。各種マニュアル類をiPadの中に集約することで、印刷費や搭載している紙のマニュアルの重量(約20kg)の軽減による燃料費の削減効果も期待している。

 パイロットの毛利 義宗氏(運航本部 運航訓練部 787訓練室 飛行訓練教官 787機長、写真6)も、「現在はフライト前に確認している気象情報を、iPadを使って操縦室からビジュアルにリアルタイムに確認できるようになれば、最新の気象状況をより正確に把握できるようになる。マニュアルも上空で即座に見られるようになる」と、iPadの活用に大きな期待を寄せる。