リモートワイプが可能なCellularモデルを配布

 客室乗務員へのiPad mini導入プロジェクトを開始したのは、2012年7月。同年12月からiPad用アプリケーションの開発に着手し、2013年7月から客室乗務員にiPad miniの展開を開始(2013年12月までに全邦人完了。2014年1月までに海外乗務員も含め完了)。2014年2月から本格運用を始めた(表1)。

表1●客室乗務員へのiPad mini導入の経緯
2012年7月導入プロジェクト開始
2012年12月開発着手
2013年5月iPad mini Cellularモデル導入を決定
2013年7月客室乗務員にCellularモデル端末展開開始(2013年12月までに全邦人完了。2014年1月までに海外乗務員も含め完了)
2014年2月本格運用開始

 客室乗務員に配布したモデルは、iPad miniのCellularモデルである。Cellularモデルはリモートワイプが可能なので、セキュリティを強化できるからだ。ただし、海外基地の客室乗務員には、Wifiモデルを配布している。

4つのiPad用アプリケーションを開発

 同社が客室乗務員用に開発したiPad用アプリケーションは全部で4つある。1つは、iPadから時間、場所を問わず適切なタイミングで業務報告を行える業務報告用アプリケーション。2つめは、自分が乗務する便にかかわる情報をiPadで閲覧できるアプリケーション。3つめは、乗務便にかかわるアンケートの回答をiPadから入力できるアプリケーション。そして4つめは、機内アナウンスや機内英会話(海外基地乗務員向けには機内日本語)を学べる自己啓発教材である(写真3、表2)。

写真3●iPadのデスクトップ画面
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表2●客室乗務員向けの主なiPad用アプリケーション
名称用途概要
iCo-CAF業務報告(CabinAttendantForm)の電子化・報告内容のテンプレートを用意したアプリ上で、iPadから入力
・時間・場所を問わず適切なタイミングで発信が可能となることで、安全・サービス上の問題へのきめ細やかな対応を実現
iCo-CAROL INFO便別情報の電子化・乗務便にかかわる情報を各自のiPadに配信
・情報紛失リスクの回避や紙出力からの媒体変更により費用削減も可能
iCo-アンケート乗務員向けアンケートの電子化・乗務便にかかわるアンケートを各自のiPadに配信し、端末上で入力
・アンケートへの回答の容易化もさることながら、集計およびアンケート結果のフィードバックが迅速化するメリットも大きい
iCo-PA/FLT English/FLT Nihongo自己啓発教材(機内アナウンス/機内英語/機内日本語)・自己啓発に役立つ機内アナウンス(PA:PublicAddres)および機内英会話(海外基地乗務員向けには機内日本語)をセンテンス単位で再生するアプリケーションを搭載し、iPadでいつでもどこでも利用可能

写真3●IT企画本部 IT企画部 航空オペレーショングループ マネジャーの小林 薫氏
写真3●IT企画本部 IT企画部 航空オペレーショングループ マネジャーの小林 薫氏

 iPad用アプリケーション開発では、セキュリティを非常に重視した、とIT企画本部 IT企画部 航空オペレーショングループ マネジャーの小林 薫氏(写真3)は語る。「サーバー上にデータを置いたほうがセキュリティ面では好ましいが、機内では『機内モード』で使うことになるので、データはiPadのストレージに置くしかない。このため、情報漏えいを防ぐ仕組みを二重三重にかけた」(小林氏)。例えば、搭乗便の情報(顧客情報)は、乗務後に一定の期間が経ったら自動的に消える仕組みにしている。

 アプリケーション開発と同時に、従来は機内に手荷物として携帯していた百科事典ほどのボリュームがあるサービスマニュアルをすべて電子化してiPadで閲覧できるようにしたほか、機内食の盛りつけなど、自己学習用の動画コンテンツも作成した。

 今後は、客室乗務員のアイデアを取り入れて、機能を拡張していくという。例えば、自分の乗務スケジュールをiPad上で見たいという声が挙がっている。「費用削減効果を継続して実現しつつ、お客さま満足度のさらなる向上に結び付けたい。将来的には、他部門との連携による社内コミュニケーションツールとしても活用したい」と、野口氏は抱負を語る。