Webサイトはその目的・役割に応じて、主に6つのパターンに分類できることを述べた。ここからは、その中でもBtoB企業のWebサイトに多い「情報配信型サイト」と、商品単価の高いBtoC企業に多い「誘導型サイト」に焦点をあて、それぞれのWebサイトに求められるコンテンツ要素にはどのようなものがあるかについて説明する。

「情報配信型サイト」に必要なコンテンツ要素

 情報配信型サイトに限らず、Webサイトには様々なユーザが来訪する。商品やサービスの導入を検討しているユーザもいれば、商品名はおろか企業名さえも知らないユーザもいる。ユーザのアクションへつなげるためには、ユーザのステータスに応じたコンテンツを提供して、ユーザの知識やマインドを高める必要がある。例えば、商品に全く興味のないユーザに対して、スペック情報を提示したところでなんら効果を上げられないということは容易に想像できるだろう。ここでは「興味」「関心」「比較検討」「行動」という四つの段階にわけて、それぞれ必要なコンテンツを挙げる。

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 商品名を知らないユーザに対しては、商品に関心を持ってもらうために、まずは商品そのものを認知させる必要がある。必要なコンテンツとして、商品カタログや特徴・機能をうたった商品ページを連想するかもしれないが、認知のフェーズにおいては力不足である。自分が一般ユーザであることを想定すると分かりやすいが、欲しいとも思っていない商品情報やカタログを誰が見るだろうか。商品を認知してもらうためには、ユーザに振り向いてもらう必要がある。例えば、「通信コストが最大30%カット可能!」といった効果を訴求したり、「こんなところから会社の機密情報が漏洩しています!」というようにリスクを提示して興味を引く方法がある。

 肝心なことは、これらのキャッチからいきなり商品情報ページへ誘導してはいけないということである。せっかく興味をひかれたユーザも、商品のセールスポイントだけをうたった暑苦しいページに誘導されては興味もなえてしまう。誘導先としては豆知識や統計データなどを扱った、いわゆるノウハウ系のページであることが望ましい。セールス色を入れない読み物コンテンツであれば、ユーザも安心して読み進めることができる。そのコンテンツを通じてユーザに知識を身につけてもらい、自社の商品が解決しようとしている課題に対するマインドを高めてもらうのである。

 そして、ユーザが商品に対する興味・関心を持ったなら、そこで初めてソリューションメニューとしてのサービス一覧や個別の商品ページに誘導する。さらに、興味のレベルを深めてもらうために、商品の導入事例などを紹介することが望ましい。ただ、多くの企業サイトでとても残念な点が、導入事例と実績の区別があいまいで、どっちつかずな情報を提供しているケースが多いことである。

 導入事例とは、既存顧客がどんな課題を抱えていたのか、なぜその商品を導入したのか、どのように活用しているのか、導入後は状況がどう変わったのかなど、顧客の生の声をまとめたものである。それに対して導入実績とは、商品を導入している企業のリストである。前者のコンテンツは、導入を検討している企業が自社の状況に置き換えて商品の活用シーンをイメージしてもらうことが目的であり、後者のコンテンツは、導入を検討しているユーザに安心感を与えることが目的である。導入事例と称して導入企業の数を紹介しても、コンテンツ本来の役割をほとんど果たさない。

 比較検討段階まで進んだユーザには、商品のスペックや価格などの踏み込んだ情報を提供する必要がある。この段階まで進んで初めて導入実績というコンテンツが生きてくる。導入後に何か問題は起こらないだろうかと感じる担当者に対して、過去の実績を提示して不安感を払拭するのである。さらに、このフェーズにおいて重要になってくるのがFAQである。比較検討のプロセスがより進展すると、ユーザは商品情報や特徴ページに記載されている内容だけでは、かゆいところに手が届かなくなってくる。商品情報ページに掲載するには細かすぎる内容でも、導入を検討しているユーザにとって想定されるような疑問点については、FAQという形で回答を用意しておく必要がある。ただ残念なことに、FAQコンテンツをおまけ的な要素としてとらえている企業が多い。

 また、ユーザの疑問は営業担当がフォローすることを前提にして、Webサイトでの情報公開を積極的に行っていない企業も多い。恐らく、サイトの情報は小出しにしておかなければ営業担当への問い合わせが誘発できないという発想によるものだろうが、これは大きな誤解である。今やBtoBのビジネスであっても、インターネット上の情報だけで一次選定が行われていると言っても過言ではない。「詳しい説明は営業にお問い合わせ下さい」といった姿勢では、ユーザからの評価を得ることはできないだろう。

 最終的な行動段階にまで進んだユーザには、問い合わせや資料請求といったコンバージョンポイントまで、できるだけ効率よく誘導する必要がある。しかし、最後の詰めが甘いWebサイトが多く、コンタクトを断念させているケースも見られる。問い合わせフォームが分かりやすいか、必須項目が多すぎないか(ユーザに対して必要以上に入力の負荷をかけていないか)といったことに配慮する必要がある。さらに、フォームを用意するだけでなく、電話(営業時間の表示を含む)やファックス番号など複数のコンタクト手段を提示することも重要だ。手っ取り早く電話で聞いてみたいユーザもいれば、メールでの対応を希望するユーザもいる。複数の手段を提供してユーザの判断に委ねるというスタイルが、ユーザフレンドリーな設計と言えるだろう。

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