超Excelソフトで構築した新世代帳票システムを製造や営業などビジネスの現場に導入し、データ活用を加速する企業が増えている。ヤマハ、小岩井乳業、デンソー、ジー・プランはどのように取り組んでいるのか。
ヤマハ
午前の問題を午後に解決
「午前中の生産性が落ちているな」。責任者はiPadを見て、現場の状況を確認した。生産性が落ちている作業工程は赤で示しているので一目で分かる。
責任者はその箇所をタップして、状況を把握するための詳細な指標を表示する。計画に対する進捗度合いを示す「生産能率」、生産していない時間を示す「非生産時間」、不良品の発生率を示す「不良率」といった指標を見て、原因を探りあてた。「午後の工程までに手を打とう」。責任者はすぐに改善の指示を出した──。
超Excelソフトにより、こんな作業を可能にしたのがヤマハだ。静岡県豊岡工場のシンセサイザーや電子ピアノといった電子楽器を製造する部門で、2013年3月に新システム「POPシステム」の利用を始めた(図3)。
生産性や不良率といった製造現場の状況をリアルタイムに収集・把握するのが、POPシステムの狙いだ。生産現場の担当者は、iPadから作業時間や製品の不良率などを入力。作業開始・終了時に専用アプリのボタンを押せば、作業時間を入力できる。作業員一人ひとりがデータを入力する形を採るのには理由がある。電子楽器の製造部門は、数人が一組になって一つの製品を作り上げるセル生産方式を採用しているからだ。
現場の責任者は冒頭の例のように、iPadやPCでセル(作業環境の単位)ごとの生産性を把握できる。「データを見て生産性が落ちているセルがあれば、『ベテランの社員を投入する』といった手をすぐに打って、生産性の向上につなげられる」と、楽器・音響生産本部生産企画部IT推進グループの宮田智史主任はPOPシステムの効果を説明する。超Excelソフトとして、ウイングアークの「MotionBoard」を採用した。