サーバー、ストレージ、ネットワークI/Oなどを1台で備えた垂直統合型アプライアンス。大規模なシステムを想定した製品が大半だったが、6月以降、中小規模拠点向けの製品が相次いで登場した。専任のシステム管理者がいない拠点でも、すぐにサーバー仮想環境を構築し運用できることが特徴だ。
物理サーバーの仮想環境への集約は、中堅・中小のユーザー企業でも進んでいる。ただし中堅・中小企業では、拠点間を結ぶネットワークの増強コストの問題などにより、拠点ごとにサーバー仮想化を進めることがある。
その場合、壁にぶつかりやすい。各拠点には、専任のシステム管理者が常駐しておらず、代わりにITに比較的詳しい、利用部門の社員がシステム管理者を兼任するケースが多いためだ。
兼任のシステム管理者にとって、経験のない仮想環境の管理は容易でない。特に障害が発生したとき、その対処に悩まされてしまう(図1)。仮想マシンでトラブルが起きているのか、それとも物理サーバー、ストレージ、ネットワーク機器のいずれかに問題があるのか―といった具合に、原因の切り分けが複雑になるからだ。
仮想マシン数十台の規模に向く
このような事情を抱える、中堅・中小企業の中小規模拠点に向けて、設定や運用の手間を抑えながらサーバー仮想化を進められることをうたう製品が今年6月に相次いで登場した。米Dellの「PowerEdge VRTX(バーテックス)」と、日立製作所の「Hitachi Unified Compute Platform かんたん仮想化モデル」(以下、UCPかんたん仮想化モデル)である。どちらも1台の筐体に、仮想化ミドルウエア、物理サーバー、ストレージ、ネットワークI/Oなどを統合した「垂直統合型アプライアンス」と呼ばれる製品だ(表1)。
垂直統合型アプライアンスは、これまでもいくつかのコンピュータメーカーが提供してきた。ただし既存製品は、一部の例外を除いて、大企業のデータセンターなど、仮想マシンが100台以上の大規模システムでの利用を想定したものだった。価格は最小構成で1000万円以上する製品が多く、中小規模拠点に導入するには総じてオーバースペックだった。
これに対し、PowerEdge VRTXやUCPかんたん仮想化モデルは、仮想マシンが数台から数十台で収まる規模に照準を当てる。日立製作所の對馬(つしま)隆幸氏(情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部 開発統括本部 プラットフォームサービス開発本部 第2サービス設計部 担当部長)は「中小規模拠点で必要とされるシステムは、小さければ仮想マシン3~4台程度、比較的大きい場合でも40~50台程度に収まることが多い」と指摘する。
価格は、UCPかんたん仮想化モデルの場合、最小構成で773万7000円(税別)に抑えた。PowerEdge VRTXでは、100万円台のモデルから用意した。