CSっていったい何なのだろう

 CSは、すでに広範にカスタマーサティスファクションの略語として知れ渡っており、一般用語として定着してきた。しかし、それが横文字であるがゆえに、意外とその理解にはひとりひとり温度差があるようにみえる。

 顧客満足とは、受けたサービスや購入した商品が、想定した期待を越えた時に生まれる。昨今、この「事前期待」をコントロールすれば、顧客満足は変えられるという考え方が出てきた。これまでは、顧客視点、お客さま視点で、一方的にお客さまが喜ぶ姿だけを求めて、サービスの品質向上や商品そのものの完成度を高め、満足してもらうことだけが最大目標だった。ところが、サービスサイエンスと呼ばれる新たな研究領域では、全く同じサービス、同じ商品でも、事前期待をコントロールすれば満足度は変わると考えられている。

顧客満足とは事前期待のコントロールにより変化する

 IT会社のA社とB社が、全く同じシステムインテグレーションのサービスを行ったと仮定しよう。

 A社の営業員は、お客さまに対し「このシステムは難易度が高く、高度な技術を要しますが、お客さまのご意見やご協力をいただきながら、良いシステムに仕立て上げてまいります」と言い、やっとの事で受注に結びつけた。かたやB社の営業員は、「当社は最高の技術を元に、最高のシステムを作り込んで見せますので、すべてお任せください」と、圧倒的な競合との差をみせて受注した。
その後、A社とB社は全く同一レベルのシステム構築を行った。

 そこで、お客さまの事前期待にフォーカスを当ててみる。B社のお客さまは、「これだけ自信満々なのだからきっとすごいシステムを作ってくれるのだろう」と期待は膨らんだ。A社のお客さまは、「仕様は相互確認しているので、それなりのシステムは作ってくるだろう」と一般的な期待をしていた。この結果は、A社のお客さまの満足度が高くなる。

 ここで伝えたいのは、顧客満足とは事前の期待をコントロールすることで、その度合いが大きくも小さくもなるということだ。ただ、少し注意が必要なのは、事前期待をコントロールし過ぎるがあまり、お客さまの期待も消えて、受注に結びつかない場合があることだ。これでは元も子もない。

 さらに、CSを単純な満足から感動のレベルまで押し上げるプロセスが、その構築過程で盛り込まれていれば、サービスサイエンスの領域外で顧客満足の議論ができる。前回のコラム「商品力をUXで探る」ではオムニチャネルの話をしたが、各タッチポイントにおける振る舞いの深さによって、満足から感動へのルートは作れる。

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