アルク 鎌田 伸尚 取締役 情報システム本部長/CIO。「事業を発展させるビジネスインフラの提供がIT部門の使命」と話す。
アルク 鎌田 伸尚 取締役 情報システム本部長/CIO。「事業を発展させるビジネスインフラの提供がIT部門の使命」と話す。
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 英語教材大手のアルク(東京・杉並)は2014年夏、中核となるウェブサイト「SPACE ALC」および「アルクオンラインショップ」を統合した新サイトをオープンする。同社はウェブサイトの会員やオンラインショップの購買客、通信講座や書籍教材などの購入者など、複数の事業部門に分散している顧客情報を、統合管理し活用する仕組みを構築している。

 新サイトでは、この顧客統合データベースを使って、サイトでの検索から情報照会、通信講座への入会や教材購入、継続といった顧客の動きを蓄積・分析し、サービスの拡充や顧客向けの提案強化に生かす考え。

 「SPACE ALC」は、通信講座や書籍、英語辞書など、アルクが提供するコンテンツやサービスなどの情報を集約するポータルサイトで、月間240万人のユニーク・ユーザーを持つ。しかし、SPACE ALCやアルクオンラインショップ、通信講座などの利用者情報は、それぞれ別の顧客データベースやファイルに格納され管理されていたため、これまでは、複数の事業にまたがった顧客の行動履歴などを把握することは難しかった。

 例えば、SPACE ALCで顧客が情報を照会してから通信講座を契約するまでの動きと、同じ顧客が通信講座を継続利用したり、別の教材を購入したり、あるいはTOEICを受験したりといった行動の情報が分断されてしまっていた。

 そこで、全社顧客統合プロジェクトを立ち上げ、2013年10月に全社CRMシステムを稼働させた。十数カ所に分散したデータベースやファイルから、それぞれ情報を抽出して重複の削除や名寄せといった処理を行い、「顧客統合データベース」に格納する仕組みを構築。これをCRM(顧客情報管理)アプリケーションで各事業部門の担当者が分析できるようにした。

1年半かかるプロジェクトを半年で完了

 散在している顧客データの抽出と整理には、ETL(抽出/変換/登録)ソフトの「ASTERIA WARP」(インフォテリアが提供)を、CRMソフトはオープンソースの「SugarCRM」を採用した。「既存システムのデータベースやファイルには一切手を入れていないので、現場の業務には全く変更はなく、これまで通りに使える」と鎌田伸尚取締役情報システム本部長/CIOは話す。

 今夏に稼働予定のウェブサイトの開発にも、この仕組みをフル活用する。ウェブサイトからの顧客データを、ETLソフトで統合顧客データベースに取り込むアプローチにより、大幅なリニューアルにもかかわらず約半年で完了する予定。コストも大幅に抑えることができるとみる。

 同社の情報システム本部は2012年9月以降、全社顧客統合プロジェクトのほか、情報インフラの再構築や、情報システム本部スタッフの仕事の再定義や標準化などに取り組んできた。開発期間の短縮はこうした多角的な取り組みの成果でもある。「従来通りのやり方ではECサイトの統合に18カ月はかかっただろう」と鎌田CIOは語る。

 情報インフラの再構築では、仮想化やクラウドを積極的に導入することで、サーバー数を半数以下にし、8カ所にあったデータセンターも、バックアップ用のセンターを含めて3~4カ所まで減らした。PC管理業務などの分担の見直しや自動化も進め、データセンターや情報インフラの運用コストも、少なくとも2割削減したという。