明日の会議の前に、どうしても読んでおきたい本がある。帰宅する前に、どこかで手に入れられないものか---。

 強力な物流システムを持つ米アマゾン・ドット・コムといえども、こうしたニーズには応えられない。翌日配達では遅いからだ。

 しかしO2Oに注力すれば、ネット専業では不可能な顧客サービスを実現できるようになる。ここにチャンスを見いだしたのが、丸善CHIホールディングス傘下の、丸善書店とジュンク堂書店だ。2013年4月にWebシステムをクラウドに移行し、「丸善&ジュンク堂ネットストア」を刷新。機能を強化した(図1)。

図1●丸善&ジュンク堂ネットストアとHONの工藤淳也社長
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最短1時間で取り置き

 顧客は店頭在庫の有無をネットから調べ、欲しい書籍の在庫があれば、即座に「取り置き」をリクエストできる。「最短1時間で店員が書棚から在庫を確保し、カウンターに希望の書籍を用意する」とネットストアを運営するジュンク堂書店子会社、HONの工藤淳也社長は説明する。取り置きしておけば、勤務先などからの帰り道に店舗で受け取れる。店頭で試し読みして購入をやめても構わない。実店舗を持たないアマゾンが、このスピードや柔軟性を真似することは難しい。

 大型書店ならではの品ぞろえを生かし、来店客の「ついで買い」を誘発することが、O2Oを強化する真の狙いだ。店舗に足を運んでもらえれば、「本を発見する楽しさを提供できる」と工藤社長は力説する。来店頻度を増やしつつ、客単価も引き上げる考えだ。